2015.08.06
- その他のアジア【イスラム】Hopewill《THE MENASA/イスラム市場通信》第8回 「イスラム教の「ラマダン」とは!?」
- 【イスラム】Hopewill《THE MENASA/イスラム市場通信》第8回
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イスラム教における「ラマダン」とは!?
アメリカの調査機関ピュー・リサーチ・センターによると、世界の宗教別人口は現在キリスト教徒が最大勢力だが、2070年にはイスラム教徒とキリスト教徒がほぼ同数になり、2100年にはイスラム教徒が最大勢力になると予測されている。
2011年1月時点でイスラム教徒は世界人口の1/4である15億7,000万人を占め、今後更にこの数値は大きくなる見込みだ。
そのイスラム教徒の間で、6月18日より最も神聖な約1ヶ月に及ぶラマダン (断食) が始まった。
今回は、現在イスラム教徒が行っているラマダンについて特集する。
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ラマダンの期間
ラマダンは、ヒジュラ暦の第9月を表す。この月の日の出から日没までの間、イスラム教徒は義務の1つである断食 (サウム) として、飲食を絶つことが行われる。
ラマダンの期間は、ムーン・サイティング・コミティーがラマダン月に最初に新月を確認した日から次の新月が確認されるまでの約1ヶ月となり、2015年は6月18日から7月16日まで、2016年は6月7日から7月8日までである。
尚、雲などで新月が確認できなかった場合は1日ずつずれる。
イスラム暦は閏月による補正を行わない為、毎年11日ほど早まって訪れる。
ラマダン期間中の食事
断食は自己鍛錬の為に行われ、私利私欲を抑え、貧しい人々の気持ちを身を以て経験する修行である。
ラマダン期間中の食事は日没から日の出までの間に限られ、この間に1日分の食事を摂る。通常、日の出前にサフルと呼ばれる食事を摂り、日没後にイフタールと呼ばれる食事を摂る。
日照時間は地域により異なる為、一部の地域では他の地域よりラマダンが辛いものとなる。
ハフポストによると、日照時間が短いものでチリ・プンタアレナス市の9時間43分、最も長いものでアイルランド・レイキャビク市の22時間であり、地域によって断食時間に大きな差が見られる。
後者のような国では、 夜明けから日没まで断食することを選ぶ敬虔なイスラム教徒もいれば、メッカの断食時間に合わせて断食を行うイスラム教徒もいる。
断食の例外
非イスラム教徒や幼児、病人、精神の病を患っている者、月経中ないしは妊娠中、授乳中の女性、旅行者は断食の例外とされる。
2012年ロンドンオリンピックと2014年FIFAワールドカップの開催期間がラマダン期と重なった際は、アスリートも断食の例外とされていた。
非イスラム教徒は断食の例外となっているものの、イスラム教徒が多数となっている国や地域においては、外での飲食等で自粛が求められる場合もある。
ラマダン期間中の健康管理
イギリスの国民保健サービス (NHS: National Health Service) は、ラマダン期間中に健康を維持する為の指針を発表し、栄養失調等の健康被害に注意を呼びかけている。
NHSは1日最低2回の食事を奨励し、小麦やオート麦、レンティル豆、バスマティ米等の炭水化物を含むことが望ましいとしている。
また、脂質や糖分を多く含む食事は避け、 茹でた団子やグリル肉、ミルクプリンを揚げ物の代わりとすることを勧めている。
イフタールの食事
ラマダンは日中の飲食を絶つ厳しい修行である一方で、日没後のイフタールの食事はラマダンならではの楽しみとなっている。
日没の合図として大砲の音が鳴り、イスラム教徒は家族団欒で普段よりも豪華なご馳走をとる。
まず、ナツメヤシを食べ、空腹の胃を慣らすところから始まる。
ナツメヤシは栄養価が高く、コーランには「神が与えた食物」としてたびたび登場する。
イフタールのはじめにナツメヤシを食べることは決まりではないが、ムハンマドが行っていたことで、イスラム教徒の間で習慣化している。
その後、豊富な野菜、肉、魚、ご飯類、デザート等の豪華な食事を楽しみ、夜更けまで賑わう地域もある。
また、ラマダン期は「喜捨」を心がけるイスラム教徒が多く、裕福な家の前や公共の広場に「ラマダンテント」が張られ、貧しい人々に無料で食事が振る舞われる光景も見られる。
編集後記
ラマダン期は、イスラム教徒の間で最も神聖とされる1ヶ月間である。
イスラム教徒が大多数を占める国では、多くの飲食店が日中閉店していることに驚くかもしれない。
イスラム市場に参入するには、イスラム教徒の慣習・嗜好を理解しておくことが非常に重要である。
非イスラム教徒に対して断食は強要されていないが、イスラム教徒の慣例を尊重し、外での飲食は慎むべきだろう。
また、イスラム教徒の人口増加に伴い、今後ムスリムのビジネスパートナーやクライアントと共にビジネスをする場も増えてくると考えられる。その際に、相手の宗教的行事や慣習を知っておくことは非常に重要である。
以上
※本レポートは、Hopewill Group (Holdings)Ltdのメールマガジン「イスラム&MENASA市場」より一部修正のうえ、転載しています。
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