2015.07.31
- その他のアジア【イスラム】Hopewill《THE MENASA/イスラム市場通信》第7回 「ムスリムインバウンド市場レポート」
- 【イスラム】Hopewill《THE MENASA/イスラム市場通信》第7回
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ムスリムインバウンド市場レポート
「イスラム旅行業界をリードするCrescentrating社による、最新ムスリム旅行市場分析レポート!」
近年中東地域や東南アジアの富裕層・中間所得層の増加、東南アジアからの訪日ビザの規制緩和、2020年の東京オリンピック開催決定に伴い、多くの日本企業がイスラム市場に目を向けている。
今回は、ムスリム旅行業界のパイオニアとも言えるシンガポールのCrescentrating社による最新の市場分析レポートを紹介する。
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●世界におけるムスリムの人口統計とその動向
世界200カ国におけるムスリムの人口は、2009年の時点で世界の推定人口68億人の23%を占める10億5700万人であり、翌2010年には10億6000万人まで拡大した。
世界の人口は2030年までに83億人まで増加することが予測されており、その内ムスリムの割合は33%にあたる22億人になると言われている。
ムスリムは世界各地に分布しており、アジア62%、中東・北アフリカ20%、アフリカサブサハラ地域62%、ヨーロッパ2.7%、アメリカ0.3%という分布になっている。
4億人あまりのムスリムは、ムスリムが少数派にあたる国と地域で生活しており、その多くはインド、ロシア、中国におけるムスリムである。
また、ムスリム全人口の内62%は30歳以下であり、この数値は世界における30歳以下の人口の51%を占めている。
イスラム社会は国際的に見ても高い経済水準を持ち、2010年時点で計57カ国からなるイスラム協力機構のGDPは、全世界のGDPの11.8%を占める 8兆1000億米ドルである。
●世界における観光業の動向
観光業は世界のGDPの9%を占め、世界で11人に1人が従事する、全世界の経済成長に貢献する最も大きな産業の1つである。
2013年には観光業の収益が1兆4000億米ドルにのぼり、これは世界の輸出総額の6%を占める大きさであった。
戦後65年間における観光業の成長は大変に急速なものであった。
1950年にわずか2500万人であった海外旅行者は、2013年には10億8700万人にのぼるまでに成長し、2030年には、海外旅行者数が18億人になると予測されている。
世界観光機関 (UNWTO)は2030年までの観光業における長期的成長予測を発表しており、年間3.3%の成長を見通している。
地域毎に見ると、アジア太平洋地域での伸びが最も大きく、ヨーロッパ・アフリカ地域の5%に続く6%の成長が見られた。
アメリカでは3%の成長が見られた一方、中東地域での伸びは横ばいであった 。
2013年、海外旅行における出費額は全世界で1兆1590億米ドルにのぼり、前年2012年の1兆780億米ドルから大きく成長した。これは実質的な5%の成長を伴い、海外観光客到着数と等しく成長している。中でも中国は海外旅行に1290億米ドルを支出し、観光業において世界で最も大きな市場を確立してきている。
●ムスリム旅行市場の動向
ムスリム旅行市場は観光業において最も急速な成長を見せる市場の1つである。
Crescentrating社は、2011年度のムスリム旅行市場の市場規模は1260億米ドルと推定され、これは国際観光収入額のおよそ12.3%を占めている。
2020年までにムスリムは世界の人口の約25%を占め、世界における支出の13.4%を占めると予測されており、その後もそれを超える成長が見込まれている。
湾岸協力会議 (GCC Cooperation Council) 加盟国が依然としてムスリム旅行における最も大きな支出割合を占めており、その割合は37%に及ぶ。
インドネシア・マレーシア・シンガポールなどの東南アジア各国が10%、イラン・トルコが16%を占めている。
一方で、イギリス・ドイツ・フランス・ベルギー・アメリカを含むイスラム協力機構非加盟国によっても、25%が占められている。
ムスリムアウトバウンド市場における観光支出額上位5カ国はサウジアラビア、イラン、アラブ首長国連邦、クウェート、インドネシアとなっており、依然として湾岸諸国が大きな割合を占める。
一方で、ムスリムインバウンド市場としてのムスリム旅行者受入国上位5カ国は、マレーシア、トルコ、アラブ首長国連邦、シンガポール、ロシアであり、また6位に中国、8位にタイが位置している為、アジア地域へのムスリム旅行者が多いことが伺える。
●日本におけるムスリム旅行市場
2004年当時の訪日ムスリム旅行者数は推定15万人であり、訪日旅行者全体の2.4%を占めるにすぎなかった。
しかしながら、2013年には推定30万人まで増加し、その全体における割合はおよそ2.9%となった。
2020年までには100万人まで増加すると考えられている。
東南アジア地域からのムスリム訪日客が多く、その割合はマレーシア24%、インドネシア27%、シンガポール6%となっている。
また、現在日本には18万人のムスリムが居住しているとされており、その内90%が在日外国人で、10%が日本人であるとされている。
●編集後記
世界におけるムスリム人口の増加とともに、ムスリム旅行市場も急速に成長してきている。
この市場の動向を受け、アジア地域では、イスラム教徒が多く生活するマレーシアをはじめ、この市場をいち早く興味を示したシンガポールやタイ、香港、台湾においてもムスリム観光客を受け入れる為の体制が整備されはじめている。
特に、シンガポールは2015年度MasterCard-Crescentrating Global Muslim Travel Index (マスターカード社及びクレッセントレーティング社による世界ムスリム観光における指標)において第9位の評価を受けており、イスラム協力機構加盟国を除く国の中では最高位に位置している。
一方で、日本におけるムスリム観光客の受け入れ体制は未だ十分には整っておらず、他のアジア各国と比較して遅れを取っているといえる。
来る2020年東京オリンピックに向け、今後訪日ムスリム旅行者数は大きく拡大することが見込まれ、早急な体制の整備が望まれる。
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Crescentrating社とは
ハラルツアーのセグメントを開拓したパイオニア的企業。
同社は2009年以来多くのハラルツアーに関するワークショップやセミナーを開催しており、ファザール・バハディーン氏は、ハラルツアー開発の専門家として、各国で講演を行っている。同社は世界各国のホテルやレストランのハラルフレンドリー度合を評価し、Webページに公開することで、ムスリム旅行者に指針を提供している。2015年2月より、日本支社となるCrescentrating Japan株式会社を設立。
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以上
※本レポートは、Hopewill Group (Holdings)Ltdのメールマガジン「イスラム&MENASA市場」より一部修正のうえ、転載しています。
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※「THE MENASA/イスラム市場通信」の過去記事は 「国別情報一覧」 よりご確認ください。
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本レポートを通して、少しでもこの「MENASA」「イスラム」というキーワードが皆様にとって身近なものとなりましたら幸いです。
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