2015.07.09
- その他のアジア【イスラム】Hopewill《THE MENASA/イスラム市場通信》第6回 「イスラム関連国の紹介④《トルコ-後編-》」
- 【イスラム】Hopewill《THE MENASA/イスラム市場通信》第6回
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前編は、トルコにおけるイスラム教の歴史とその慣習について紹介した。後編では、トルコにおけるムスリム観光市場についての情報をお届けする。
トルコにおけるムスリム観光市場
ムスリムの多く住んでいる国では、生活環境が整っている為、ムスリムはそういった国を選んで旅行をする傾向がある。
トルコは全国民の99%をムスリムが占めている為、ムスリムの為の食事や礼拝の為の施設へのアクセスが非常に容易であり、ムスリム観光客が旅行を楽しめる環境が整備されているといえる。
特に自国が非イスラム教の国であるムスリム観光客にとっては、トルコにおいては食事・お土産等全てがハラルである為、大変魅力的な観光地となっている。
2014年度、トルコは760万人のムスリム観光客を受け入れ、この数値はトルコにおける観光客数の18.3%を占めており、トルコがムスリム観光客から人気の観光地であることは数字からも明らかである。
トルコの首都イスタンブールは、2015年度MasterCard-Crescentrating Global Muslim Travel Index (マスターカード社及びクレッセントレーティング社による世界ムスリム観光における指標) にて100点満点中73.8点という高得点を獲得し、世界で2番目にムスリムフレンドリーな観光地として認定された (1位は83.8点のマレーシアであり、3位アラブ首長国連邦、4位サウジアラビア、5位カタール、6位インドネシアと続く)。
トルコにおけるムスリム観光客の為の高級ホテル
the Sultan Beach Hotel (サルタン・ビーチ・ホテル) は、トルコで人気のリゾート地であるボドルムに位置するムスリムの為のホテルである。
プールやビーチチェア、綺麗なグラスに入ったドリンクを提供しており、一見すると他のホテルと変わらないが、「プールは男女別」、「アルコールの提供は一切なし」、というようにイスラム教の教えを徹底している他、礼拝の為の施設もきちんと完備している。
ボドルムは煌びやかなパーティーで盛り上がる観光地として有名であり、ムスリム観光客にとって疎遠なイメージのある観光地であったが、ムスリムの間での中高所得者層の拡大に伴ってこのような観光地に対する人気も高まっている。
トルコにおけるもう一つのリゾート地、チェシュメに位置する高級ムスリムフレンドリーホテルの Club Familiar Hotel (クラブ・ファミリアー・ホテル) では「太陽、海、そしてハラル!」をスローガンとして、ムスリムに向けてビーチでの余暇を推進している。
こちらのホテルでも、プールは男女別でアルコールの提供はなく、礼拝施設を完備している。
女性が肌を見せることを良しとしないイスラム教において、ムスリムがビーチで余暇を楽しむことは想像に難いかもしれないが、現在、ムスリム観光市場において海水浴の人気が高まっている。
未だ海水浴に対して抵抗のあるムスリムの女性も多く見られるが、全身を覆う「ハセマ」という水着を着用し、海水浴を楽しむ女性のムスリムも見られるようになってきている。
従来のムスリムフレンドリーホテルは1泊30ユーロ程度のものが主流であったが、現在ではその倍以上もするホテルも多く見られるようになった。
これにはアラブ諸国からの富裕層ムスリム観光客の増加が大きく起因しており、2012年度には、サウジアラビアからの旅行者だけでも、前年度の151%の伸びがあったことが、トルコの観光省から発表されている。
派手やかな観光地においてムスリムに新たなトレンドを提供しながらも、イスラム教の戒律を遵守することにより、トルコは、富裕層ムスリム観光客の間で徐々に人気を獲得している。
所感として
肌を見せることを良しとしないムスリムの間でビーチでの余暇が人気を獲得していることは、今までのムスリムのイメージから考えると少し驚かれた方もおられるのではないだろうか。
世界でムスリムのニーズに十分に対応をしている施設は未だ少なく、宗教の教えと娯楽の両立には、高いハードルが存在している。
しかしながら、イスラム教の戒律に従うように工夫をすればムスリムでも楽しめるようになることを示したのが、今回のトルコにおける2つのリゾートの例である。
現在、日本においてはムスリムのニーズに対応する観光地は非常に限られており、ムスリムが旅行を楽しむことが容易でない環境となっている。
急速に拡大するイスラム市場を日本の商機とするためにも、速やかなムスリム受入体制の整備が望まれる。
※本レポートは、Hopewill Group (Holdings)Ltdのメールマガジン「イスラム&MENASA市場」より一部修正のうえ、転載しています。
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