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2015.04.15

その他のアジア【アジア】World Life Style Research/第13回 「変革期にあるベトナム 内需拡大と“ニッポン”の可能性」
【アジア】World Life Style Research/第13回
◇ 『 World Life Style Research 』は、海外市場調査を支援する株式会社TNCが、世界70か国 500名の登録リサーチャーからの情報を皆様にお届けするレポートです。
世界各国のライフスタイルに関する最新情報を皆様の海外ビジネスにお役立ていただければ幸いです。

第13回は、「変革期にあるベトナム 内需拡大と“ニッポン”の可能性」をお伝えします。


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変革期にあるベトナム 内需拡大と“ニッポン”の可能性

※本文は『TNC Asia Report(2015年3月31日配信)』より転載しております


変革期にあるベトナム 内需拡大と“ニッポン”の可能性

 

変革期にあるベトナム 内需拡大と“ニッポン”の可能性

2015年末に予定されているASEAN共同体の発足などますます盛り上がる東南アジアにおいて、近年著しい発展を遂げているベトナム。8,971万人(2013年統計)の人口を抱え、経済発展とともに中間層も増加の一途。市場経済化も進行し、さらなる内需拡大を見込んで日本企業を含む外資も多く入ってきています。また、ベトナムは国民の平均年齢が27歳(2014年)と若く、安価な人件費と豊富な労働力を求めて世界中の企業が生産拠点を中国からシフトしてきている状況もあります。そんな幅広い可能性を秘めたベトナム市場ですが、南北に長い国の特徴、格差社会、人びとの気質やライフスタイルを把握しないことには難点やリスクも数多く存在します。今回はTNCメンバーが今年初めに行った視察から見えてきたベトナムのいまをレポートします。


商業都市ホーチミンと行政都市ハノイ
 

(左)ベトナムの地図(右)開発が進み高層ビルが増えるホーチミン

(左)ベトナムの地図
(右)開発が進み高層ビルが増えるホーチミン

インドシナ半島の東側に位置し、南北に長いベトナム。ベトナムと一口に言っても、この国の市場を語る上で欠かせないポイントが、南部のホーチミンと北部のハノイという二大都市の違いだ。この2つの都市を中心に形成される二大経済圏は、「別の経済圏」ととらえる必要がある。


800万近い最大の人口を抱え、市場経済が発展し都市化が進む商業都市ホーチミン。かつてのサイゴン時代にフランスの統治・侵略の歴史を経て西洋文化が広まり、自由主義と市場経済が発展。人びとの気質も商売気が強く、新しいもの好き、陽気で大らか、消費意欲も高い。南に位置するため熱帯気候に属し、一年を通して温暖なことも人びとの気質やライフスタイルに影響する。
 

一方で約700万の人口、政治機能や各国大使館等が置かれる首都ハノイ。古くは中国からの影響を強く受け、旧市街や寺社などの歴史的建造物も多く残っている。中央政府のお膝元であるため、新しい物事には慎重で外資の進出や市場経済もホーチミンほど進んでいない。人びとの気質は真面目で控えめ、慎重派といわれる。北部に位置するため四季もあり、冬には10度を下回ることもあるほど。一般的に気候や文化も含めて、日本人と気質が近いのはハノイだといわれている。
 

こうした2都市の特徴は人びとのライフスタイルや消費に大きく影響する。「宵越しの銭は持たない」ホーチミンと、「真面目な節約家」ハノイといった風に両都市の気質を比喩的に表現することがあるが、まずはこの2つの都市や市場の違いを理解したうえで現地のマーケットをとらえることが必要不可欠だろう。
 

ホーチミン
 

若者でにぎわうスターバックスコーヒー

若者でにぎわうスターバックスコーヒー


中間層の増加と外資参入がもたらすライフスタイル変化の兆し
ベトナム最大の商業都市ホーチミンは、いま大きな変革期を迎えている。戦後40周年を機に都市部の至るところで開発やインフラ整備が進行中。日本のODAによる東西ハイウェイ建設や2020年までには複数の地下鉄網も張り巡らされる計画もある。


そんな変化を続けるホーチミンでは多分野で外資の進出ラッシュだ。ベトナム資本のビンコムセンターだけでなく、市内中心部には外資の高級デパートや複合施設がいくつもあり、中のテナントの多くが外資系ブランドやチェーン店となっている。来年には高島屋の初出店も予定されている。
 

外資で目立つのがグローバル飲食チェーンやスーパーの進出だ。ローカル商品に比べて価格は少し上がるが、いまや市民に広く浸透しているといってもいいだろう。2013年には、もともとコーヒー文化が浸透しておりローカルチェーンも強いベトナム市場に、ついにスターバックスコーヒーが参入。2014年にはマクドナルドも進出をはたし、常ににぎわっている。徐々に所得も増え、新しいもの好きのホーチミン市民をターゲットに、今後もますます外資の参入が続きそうだ。

 

(左)日本のODAによる地下鉄工事が進むグエンフエ通り(中)マクドナルド1号店は2014年2月にOPEN。バイク専用のドライブスルーも。(右)7区の新興住宅地フーミーフン

(左)日本のODAによる地下鉄工事が進むグエンフエ通り
(中)マクドナルド1号店は2014年2月にOPEN。バイク専用のドライブスルーも。
(右)7区の新興住宅地フーミーフン


また、経済発展や外資の参入にあわせて、郊外では新都心と呼ばれる外国人向けの新しい住宅街や富裕層向けのエリア開発なども進んでいる。中心部から南に位置する7区には、台湾資本によって開発された新興住宅地「フーミーフン(Phu My Hung)」の開発が進行。広大で緑豊かな環境の中に巨大な住宅地や大型ショッピングセンターなどができ、一般的な庶民とは異なるライフスタイルを送る人びとが生活するエリアが形成されている。
 

存在感を高める“ニッポン”の可能性
一般に親日国といわれるベトナム。歴史背景やODAによる支援、アニメなどのコンテンツ人気も重なって、日本に好感や興味をもつベトナム人は多い。変革期にあるベトナムにおいて、これから“ニッポン”の存在感はますます高まっていく可能性を感じることができた。
 

(左)高級百貨店内にある資生堂のショップ(右)家電量販店でも広いスペースに並ぶ日本製品

(左)高級百貨店内にある資生堂のショップ
(右)家電量販店でも広いスペースに並ぶ日本製品


●広く認知される工業製品の日本クオリティ
バイク大国ベトナムにおいて、バイクのことを「ホンダ」と呼ぶほどシェアを獲得しているホンダ。その品質と耐久性は絶大な信頼を得ている。また、ヤマハやカワサキも一定のファンを持っている。
同様にテレビ、冷蔵庫等の家電製品全般も日本製には大きな信頼があり、日本製を必ず選択する、または憧れをもつベトナム人は多い。化粧品やその他生活に関わる様々な製品において、“日本製”が強いアピールポイントになることは間違いない。
ただし、一般に日本製品は現地における価格が他よりも高いため、実際に購入できるベトナム人はそれなりの所得層といえるだろう。安価で提供できる競合メーカーは多く、どのターゲット層に向けてどれくらいの価格で展開できるかが重要となる。
 

●新しい価値を提案する流通大手
ホーチミンでは発展にともなって市民の消費の場所も変化し、モダン流通を利用する人びとも増えている。日本の流通大手イオングループも2014年には郊外に初進出。増加が見込まれる中間層以上のファミリー世代に向けた「新しいライフスタイルの提案」をめざして、広大な敷地に食品から生活用品全般の幅広い品揃えを誇り、一日楽しめるようにアミューズメントエリアも充実させた。ホーチミンには2号店もオープンし、ハノイでの出店も計画されている。
 

(左)2014年1月にオープンした「イオンモール タンフーセラドン」 (右)ファミリーマートは日本同様24時間営業

(左)2014年1月にオープンした「イオンモール タンフーセラドン
(右)ファミリーマートは日本同様24時間営業


コンビニ大手のファミリーマートも2009年、日系コンビニとして初進出。紆余曲折を経て、現在は70店舗を数える。日本同様、食品や日用品がいつでも購入できる便利さと日本のサービスクオリティを強みに人気を獲得した。日本のおにぎりや弁当、ホットスナック、イートインスペースなども現地人に受けている。今後はより店舗数を増やし現地の流通に定着させることが狙いだろう。
 

●日本食店は「差別化」「専門化」がカギ

モダンな空間で本格ラーメンを提供する「Ramen Bar Suzuki」

モダンな空間で本格ラーメンを提供する「Ramen Bar Suzuki

ホーチミンでは数年前から本格的な日本食ブームが起こり、すでに300店舗以上の日本食店がある。これまで多かったのは、寿司や洋食、麺類など何でもそろい、それなりの味と値段で食べられる総合日本料理店。それらはベトナム人にも親しまれてきたが、現在は差別化、専門店化がカギになっている。日本人も多く住むレタントン通り周辺には、本格的でクオリティが高く、差別化された日本食を提供する店が増え、日本人だけでなく、外国人やベトナム人の富裕層にも大人気だ。


●出張者のニーズをつかむ日本式ホテル


「東屋ホテル」のスタイリッシュなエントランス

東屋ホテル」のスタイリッシュなエントランス

変化を続けるホーチミンにおいて、ターゲットはベトナム人だけではない。ますます増える日本からのゲストはもとより、世界中のゲストにとっても質の高い日本のサービスは嬉しいもの。ホーチミン、ハノイ、ダナンで日本式ホテルとして展開する「東屋ホテル」。露天風呂とこだわりの和朝食を武器に、潜在ニーズをとらえた。ホテルには日本食レストランを併設し、「風呂上がりの一杯」という提案も魅力的だ。


有望なベトナム市場において、様々な分野で“ニッポン”の可能性ははかり知れない。製品だけでなく、特に流通、飲食・サービス関連、不動産・ホテル、在留邦人やベトナム人富裕層向けのサービスなど、数多くの日本企業が、この活気あふれる商業都市ホーチミンに進出している。日本人の若手起業家の活躍もめざましい。今後の動向に注目したい。

 

2012年5月に開業した「ランドマーク72」。現在ベトナム最高層ビルでオフィスや商業施設が入る。

2012年5月に開業した「ランドマーク72」。現在ベトナム最高層ビルでオフィスや商業施設が入る。



2030年に向け変貌を続ける首都
北部、首都ハノイでも大きな変革が続いている。2030年までのマスタープランでは周辺アジアの首都や大都市に匹敵するほどの工業化、近代都市化を推進するために、ホーチミン同様に大規模なインフラ整備やエリア開発が進行中だ。

ホアンキム湖、タイ湖周辺の市街地はそのままに、中心部から西南に位置するエリアでは「新都心構想」が進行。将来的に首都機能を西南に移す計画がされており、大型複合施設や外資系の高層オフィスビル、富裕層向けのマンション群の建設が進んでいる。


一方で中心部からホン川をはさんで東側のロンビエンエリアには、主に富裕層や外国人をターゲットにした大規模なニュータウン「ヴィンコム・ヴィレッジ」が整備中だ。ベトナムの不動産開発大手ビングループが広大な敷地を買い取り、およそ1000戸もの住宅群と学校やスポーツ施設などを建設した。住人をターゲットにした高級商業施設もあり、経済発展とともに利用者が増えれば大きな消費地域になりうる。
 

(左)美しい一戸建てがズラリと並ぶ (右)住人をターゲットにした高級商業施設

(左)美しい一戸建てがズラリと並ぶ
(右)住人をターゲットにした高級商業施設


変わらない庶民の暮らし
ホーチミンと同様、大きく様変わりする都市にあって、庶民の暮らしはそれほど大きく変化していないのが現状だ。日々の生活に必要な食品や衣類、日用品などはやはりローカルな市場や商店が圧倒的に強く、多くの人が利用する。旧市街エリアも観光客向けだけでなく、地元の人びとの暮らしと密着した商店や飲食店が多く、庶民の暮らしぶりが感じられる。加えて、ハノイは政府の影響が強いためホーチミンほど外資の流通は入ってきてないので、昔ながらの庶民の消費スタイルが大きく変化するにはもう少し時間がかかりそうだ。
 

(左)ハノイ最大の市場ドンスアン。2階まで小規模店がぎっしりと立ち並ぶ。 (右)テト(旧正月)用の装飾が売られる旧市街の露店

(左)ハノイ最大の市場ドンスアン。2階まで小規模店がぎっしりと立ち並ぶ。
(右)テト(旧正月)用の装飾が売られる旧市街の露店



日本企業にとってのハノイ

中~富裕層をターゲットにした牛角。店内は高級感があり、スタッフの教育にも力を入れる。

中~富裕層をターゲットにした牛角。店内は高級感があり、スタッフの教育にも力を入れる。

ハノイでも日本文化、製品やサービスに対するイメージは総じて良い。特に流通やサービス業に関してはホーチミンほど競合が多くないため、一度入ると可能性は大きい。ただ、政府の影響が強く市場経済に対する対応が厳しかったり、2012年の統計によるとハノイはホーチミンに比べてモダントレード比率が半分に満たないという数字も出ており、庶民の生活に入り込むのは容易ではない。そんな中、コロワイド・ベトナムは「牛角」の一号店をハノイでオープンさせた。現地の中~富裕層をターゲットに、価格は高めだがそれに見合う品質の味とサービスを提供するため、現地人従業員の教育にも力を入れるという。一般にハノイの人のほうが気質が勤勉で忍耐力があるため、雇用するには良いとされる。製造業の工場やIT企業のオフショア開発先として選ばれるのもそうした理由もあるだろう。ハノイの特徴をよくリサーチ、準備したうえで臨みたいところだ。

 

今回ベトナム視察に行き、本特集を編集した、TNCの岸本と堀川

今回ベトナム視察に行き、本特集を編集した、TNCの岸本と堀川



今回の特集はいかがでしたでしょうか。発展著しいベトナム市場へ挑戦する日本企業は今後も増加していくでしょう。
ただ、特にベトナムにおいて現地で受け容れられるためには、まずホーチミン・ハノイ両都市の分析、ターゲットとなる人びとの本当のライフスタイルやニーズを把握することが必要不可欠です。


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