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2015.04.01

その他のアジア【イスラム】Hopewill《THE MENASA/イスラム市場通信》第4回 「イスラム関連国の紹介③《オーストラリア》」
【イスラム】Hopewill《THE MENASA/イスラム市場通信》第4回
世界人口の1/4を占めるイスラム教徒。
全世界のムスリムの約60%がアジア太平洋地域に集中している。
このコーナーでは、アジアのイスラムの国をピックアップし、その国の基本概要から、経済・政治・文化に関する最新情報をお届けする。
今回は、非イスラム国であるオーストラリアのイスラム市場に向けた取り組みを紹介する。
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オーストラリアにおいて、ムスリムは人口のわずか2.2%を占める少数派であり、日本と同じく国内のイスラム市場規模は未だ大きくない国である。
一方、オーストラリアはおよそ2億8000万人ものムスリムを有するASEAN諸国に近く位置するという地理的要因から、食肉を中心としたハラルフードを多く輸出し、ムスリム諸国との貿易関係が深い国である。


●オーストラリアのハラル認証機関

オーストラリアにおけるハラル認証機関の歴史は古く、1970年代オーストラリアン・フェデレーション・オブ・イスラミック・カウンシル (the Australian Federation of Islamic Councils=AFIC) が、オーストラリア在住のムスリムが購入する食品に対しての基準の設定や監査を開始したことに始まる。

現在オーストラリアには公式に発表されているだけでも24ものハラル認証機関が存在しているが、主なハラル認証機関は非営利組織である、AFIC、ハラル・サーティフィケーション・オーゾリティ・オーストラリア (the Halal Certification Authority Australia)、スプレーム・イスラミック・カウンシル・オブ・ハラルミート・イン・オーストラリア (the Supreme Islamic Council of Halal Meat in Australia)、イスラミック・コーディネーティング・カウンシル・オブ・ビクトリア (the Islamic Coordinating Council of Victoria) の4つとされている。

オーストラリアでは、ハラル認証 は、肉・肉製品において最も取得され、その他に、トーストに塗るオーストラリア伝統の塩辛いペーストのベジマイトや、オーストラリア定番のお菓子であるアンザックビスケットでの取得も見られている。


●AFICのハラル認証

オーストラリアン・フェデレーション・オブ・イスラミック・カウンシル (AFIC)は、インドネシア、シンガポール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタール等、厳格なハラル認証を有する機関から認定されているオーストラリア国内有数のハラル認証機関である。AFICでは と畜から骨の除去、冷蔵・冷凍、梱包、配送まで、シャリーアに則った方法で行われているか検査をしており、オーストラリア国内の300-400社の商品にハラル認証を発行している。
なお、ハラル認証の有効期間は1年間である。


●と畜方法について

と畜の許可は、AFICに登録を行い、身分証明書を有するムスリムのと畜人のみに与えられる。
このと畜人は性格が良好で信仰心の深いムスリムでなければならず、オーストラリア在住のムスリム2人と、と畜人が通うモスクのイマームからの推薦状が必要である。

と畜される家畜はイスラム法にて許されたハラルでなければならず、生きている状態 (気絶を含む) でなければならない。
牛をと畜前に気絶させる場合、「マッシュルーム・スタナー (Mushroom Stunner)」と呼ばれる器具で前頭部を殴打し、この際、死に至らしめてはならない。
と畜する際は「Bismillah Allaho Akbar (偉大なるアッラーの為に) 」と唱え、喉仏より下方の部分によく切れるナイフで一度に切り込みを入れ、家畜を瞬時に死なせるために、気管、食堂、顎動脈、頸動脈を同意に素早く切断しなければならない。
この際、首を切り落としたり、脊髄を傷つけてはならない。

と畜された家畜が加工される前には、ハラル・チェッカー (Halal Checker) がハラルに則った方法でと畜が行われたかを確認し、非ハラルであると判断された場合にはハラル肉と別に処理、保管、輸送される。ハラル肉の為に使用される場所や器具が、豚や非ハラル肉に使用されるものと混在されることは厳しく禁じられている。


●ハラル肉の出荷について

ハラル肉を処理場から出荷する際、と畜段階がハラルであったことを証明する「仮輸送証明書」を添付しなければならない。
輸送および倉庫等に保管する際、ハラル肉は非ハラル肉から隔離されなければならず、非ハラル肉との間に感覚をあける、敷居を設置する、別々の場所で保管・輸送するなどの処置が取られる。
豚肉や豚肉加工品と同じ場所に保管すること、同じ冷凍・冷凍庫に入れることは厳しく禁止されている。


●国内のイスラム市場

オーストラリアはキリスト教徒が大多数を占める為、ムスリムは少数派である。
しかしながら、隣国インドネシアやマレーシア、また、中東からの移民流入を背景にムスリムの人口が増加傾向にあり、2001年と比較してムスリムの数は約70%増加した。
オーストラリア在住のムスリムは、イスラム教の戒律を厳しく守るムスリムから、西洋文化に順応して世俗化したムスリムまで多様であり、国内ムスリムがどの程度厳格にハラル食品を選択しているかは分かっていない。
また、ハラル食品の小売業・外食業は個人経営の零細事業が中心で、大手の小売販路における存在感は大きくなく、大手スーパーにおけるハラルであることが明記された肉・肉製品の販売はほとんど見受けられない。


●海外イスラム市場への輸出

先に見た国内市場とは対照的に、ハラル食品の海外イスラム市場に向けた輸出が 急速に伸びてきている。
オーストラリアは有力な食肉生産国であり、オーストラリア産の食肉は世界的に需要が大きい。
イスラム諸国においては、食肉需要が高いため、事業拡大を狙うオーストラリアの食肉生産者にとって見逃せない市場となっている。牛肉の輸出に関しては、 地理的に近いという要因から、東南アジアに向けた輸出が最も多く、中でもインドネシアへの輸出はおよそ930億円に及ぶ。
また中東諸国向けの牛肉の輸出も近年大幅に伸び、特にサウジアラビアに向けて、2013年度は輸出量が前年度の約4倍、輸出額が約6倍と急速な増加が見られた。また、羊肉の輸出は、中東諸国がオーストラリアにとって最大の輸出先となっている。


●政府による支援

オーストラリア政府は牛肉・羊肉の輸出市場開拓を支援しており、中東諸国などのイスラム諸国向けの食肉・肉製品のハラル認証にも力を入れてきた。
オーストラリア政府は、「2005年肉および肉製品輸出管理法」に基づいて、「オーストラリア政府認定ハラルプログラム (Australian Government Authorized Halal Program) 」を発令しており、ハラルの肉・肉製品の輸出について、家畜のと畜から解体、加工、保管、非ハラル食品との分離、証明書の発行、輸送方法などに渡る詳細を規定している。
また、ハラル肉・肉製品を海外に輸出するには、連邦農業省が承認するイスラム団体 (Approved Islamic Organization=AIO) の認証を受けること、AIOが認定し身分証明書を持つと畜人 (Authorized Muslim Slaughterman) がイスラム教の戒律に則った方法でと畜をしなければならないこと等も定められている。


以上

※本レポートは、Hopewill Group (Holdings)Ltdのメールマガジン「イスラム&MENASA市場」より一部修正のうえ、転載しています。
※ 本内容につきまして、無断複写・複製を禁止いたします。
※「THE MENASA/イスラム市場通信」の過去記事は 「国別情報一覧」 よりご確認ください。


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「THE MENASA/イスラム市場通信」は、今後ますます注目を集める地域のME(Middle East) 、NA(North Africa)、SA(South Asia) 市場およびイスラム市場について、様々な観点から情報を発信してまいります。
本レポートを通して、少しでもこの「MENASA」「イスラム」というキーワードが皆様にとって身近なものとなりましたら幸いです。

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