2012.09.03
- その他のアジア【アジア】アジア通信/第一回 アジアの魅力 -企業経営という切り口から見るアジア-
- アジア通信/第一回
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今の日本はアジアブームに沸いています。従来からの生産拠点としてのアジア、つまり人件費の安さが魅力のアジアに加え、市場としてのアジア、不動産投資の対象としてのアジア、節税としてのアジアなど、様々な視点から、アジアへの関心が高まっています。ここで、改めてアジアの魅力を整理してみましょう。
<ASEAN地図>http://www2.yamaha.co.jp/u/world/index10.htmlより
1.アジア市場の成長余力 ―まだまだ低い一人当りGDPと増加する生産年齢人口―
魅力の一つ目は、いうまでもなくアジア市場の成長余力です。
経済成長が伸び悩む日米欧を尻目にアジアでは高成長が続いています。アジアの多くの国は、日米欧先進国と比べるとまだまだ経済規模が小さく、そうであるからこそ、高い成長余力を持っているといえます。
数字で確認してみましょう(下表)。いわゆるASEAN10[1]の名目GDP合計は、約2兆1千億ドル(日本は約5兆9千億ドル)で、人口合計は約6億人です。一人当たり名目GDPは約3,500ドルと日本(46,000ドル)の僅か13分の1にすぎません。
ほとんどの国が日米欧先進国をキャッチアップしている段階であること、これからも莫大なインフラ投資が必要であること、消費意欲が旺盛であること等を考えると、一人当たり名目GDPに大きな伸びシロがあることは間違いありません。
また、多くの国では今後も生産年齢人口(15歳以上64歳以下の人口)の増加が続くことになります(中国の生産年齢人口は2015年頃から減少する見込みです。)。生産年齢人口は、生産活動・消費活動の中心となる人口で、その国の経済規模を決定する要因の一つです。
<アジア各地域の生産年齢人口推移(百万人)> <各国の実質GDP成長率推移(%)>
2010年国連資料より タイ、インドネシア、ベトナム、中国、インド:ジェトロ資料より
日本:内閣府
今後も、一人当たり名目GDPの増加 × 生産年齢人口の増加 によりアジアの経済成長は持続することになりそうです。
2.まだまだ安い人件費
魅力の二つ目は、人件費の安さです。以下の表をご覧ください。
<アジア主要都市の一般工職の年間負担総額[2]>
ジェトロ資料より
上昇しているとはいえ、日本と比べるとまだまだ低い水準です。特に、ベトナム、ミャンマー等の人件費の低さが際立っています。
3.企業経営という切り口からアジアを見る
以上の様にアジアは魅力に溢れています。併せて、現在及びこれからの日本国内の厳しい経済環境を考えると、これからは、ますますアジアに進出する企業が増加することになりそうです。このこと自体は自然な、必然的な成り行きであると思いますが、昨今のアジアに対する盛り上がり方は、ブームというか、誤解を恐れずにいうとバブルではないか、と感じることもあります。
ブームには必ず反動があり、バブルは必ず崩壊するものです。これから進出する日本企業から沢山の成功事例が出てくることになる反面、ブームやバブルに踊っただけの企業を中心に、多くの失敗事例も出てくることになりそうです。
当社 山田ビジネスコンサルティング㈱は、企業再生のお手伝いを主力業務としている会社です。当社は、不振の日本企業と不振の海外現地法人には、共通する不振原因があると考えております。言い換えると、不振海外現地法人の不振原因の多くは、海外という外的要因よりも、経営そのものという内部要因にあると考えております。
これまでは、アジアに限らず、海外ビジネスの話は、GDPなどのマクロの切り口で語られるか、またはその国の法制度や手続きという切り口で語られることが一般的でしたが、この「アジア通信」は、企業経営という切り口から、経営者に向けた情報発信を行います。
アジア進出成功/失敗の分岐点を明らかにすることによって、これから進出しようと考えている企業の経営者、既に進出している企業の経営者の経営判断の一助になることを目指して連載を始めます。

- 【掲載元情報】
- 山田ビジネスコンサルティング株式会社 専務取締役シンガポール支店長 東 聡司
- [略歴]
山田ビジネスコンサルティング(株)創業以来、日本国内の中堅中小企業の再生支援業務に携わる。2012年1月~2月にかけて中国進出日系企業の経営状況を調査。2012年4月のシンガポール支店長就任後はタイ・インドネシア・ベトナム等ASEAN各国に進出している日系企業の経営状況を調査。経営の観点から日本企業のアジア進出をサポートする。