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2014.12.24

中国中国【中国】陳弁護士の法律事件簿⑰「高級管理職が労働契約を締結しなかった場合の責任」
【中国】陳弁護士の法律事件簿⑰
高級管理職が労働契約を締結しなかった場合の責任

2012年1月、甲はA社に入社。副総経理に任命され、主に人事総務の管理業務に従事した。甲とA社は、基準賃金を5万元/月とし、A社の評価規程により給与を査定することを約束したが、書面での労働契約は締結していなかった。
2013年11月末、甲は董事会からの評価査定の結果を不服とし、A社に対し辞表を提出、併せて労働仲裁を提起し、労働契約書の未締結を事由としてA社に2倍の賃金を支払うよう要求した。

労働仲裁、一審判決を経た後、二審裁判所は最終的に、「A社は甲に対して2倍の賃金支払いをする必要はない」との判決を下した。

『分析』

『労働契約法』第87条では、「雇用企業は雇用日から1か月以上1年未満の間に労働者と書面の労働契約を締結しない場合、労働者に対し毎月2倍の賃金を支払うものとする。」としている。当該規定は雇用企業の「規範に合わない経営活動」に対する懲罰条項に該当する。
労働者と雇用企業との間で労働契約書を締結しないことは、通常の場合においては、労働者の過失がない限り、雇用企業の過失と見なされる。労働者と比べ、雇用企業は圧倒的に強い立場にあるため、当該規定が存在する。

しかし、高級管理職が雇用企業と労働契約書を締結していない場合は、一般的な労働者と取り扱いを区別すべきである。
その理由は、高級管理職は普通の労働者とは異なり弱い立場ではないこと。また、労働者であると同時に管理者であることから、雇用企業を代表して労働者に対して管理権を行使することができ、且つ特別な約定による制約がない状況では、自身をもその管理範囲に含めることができるからである。
自身の労働契約に対して管理権を有する高級管理職は、雇用企業との労働契約書を締結していないことについて、雇用企業に対し適時通告、督促を行わない場合、明らかに管理上の過失に該当し、労働契約書の未締結は自身の過失と見なされる。この場合に当該の懲罰条項を適用することは公平性を欠くと言わざるを得ない。

本件において、甲は人事総務管理を担当する副総経理であり、自身の労働契約書締結について管理を行うことができる立場であった。且つ、労務関連法規についても熟知していると考えられ、会社が自分と労働契約を締結しない場合に不利になることも知っていたはずである。

甲は自分が管理職責を確実に履行し、且つ、A社に過失があることを証明できる十分な証拠を提出できない場合においては、「2倍の賃金支払いの請求を支持しない」とする、二審裁判所の判決は合法的であり、道理に従っていると考えられる。

以 上


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【掲載元情報】
GPパートナーズ法律事務所 パートナー弁護士 陳 文偉
[略歴]
上海復旦大学卒業後、1992年日本に留学。
1995年から1999年まで九州大学法学部にて国際経済法を専修。
日本滞在中から日系企業に対し中国に関する法律相談や法務セミナーを実施。
1999年帰国後、活動の中心を上海とし現地の日系企業に対し法律サービスを提供。
中国における会社設立・M&A・清算、PL問題、労働訴訟等、日系企業の法的課題を多く解決。
[所属]
中華全国弁護士協会会員、中華全国弁護士協会経済法務専門委員会委員

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