2014.12.17
- その他のアジア【アジア】外国人技能実習制度のこれまでとこれから/第3回 「適正な制度運営への取組み」
- 【アジア】外国人技能実習制度のこれまでとこれから/第3回
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日本の人手不足を解消しつつ、人づくりを通じて途上国の経済発展に貢献する外国人技能実習制度。しかし、一部の心ない企業の悪用により、制度自体に対する批判の声もあります。
今回は、日本と途上国、双方の未来のための適正な制度運用について考察します。
■制度に対する批判の声
途上国の経済発展を担う人材を育成するため、1993年4月に創設された外国人技能実習制度は、順調に成果をあげ、中小企業を中心に広く活用されるようになりました。
しかしその一方で、制度に対する批判の声が一部で根強く存在していることにも触れておかなければなりません。
制度における不正行為が多発していることから、米国務省は技能実習生を保護するための効果的な管理・措置が不足していると指摘し、日本弁護士連合会は制度を廃止するよう提言をまとめています。
■不正行為撲滅に向けた取組み
一部の企業や団体が実習生を単なる「安い労働力」とみなし、制度を悪用していることは確かに事実であり、アイム・ジャパンとしては、そうした企業や団体には一刻も早く退場していただきたいと思っています。
その一環としてアイム・ジャパンでは、全国規模で技能実習生受入事業を行う団体の連合会である「外国人技能実習生受入れ団体中央連絡協議会」を立ち上げ、事務局として不正行為撲滅キャンペーンを展開し、毎年パンフレットを作成するなどして、他団体に対する啓蒙活動を行っています。業界のリーダーであるアイム・ジャパンには、他団体の模範となり、制度適正化を推し進める責務があると考えています。
アイム・ジャパンの取組みに加え、制度自体も、設立から数度の改正を経て監理体制が強化されてきています。
2010年7月には、1年目の実習生に対しても労働関係法令を適用させるよう制度が改正されました。
その後も不正行為に対する罰則の強化など、実習生保護の動きは加速されています。
大変残念なことに、不正行為の件数は減少傾向にあらず(左頁の表参照)、暴行・脅迫・監禁やパスポート取上げといった人権侵害行為も、不正行為としての認定はなされていないものの、各地で発生しています。
監理団体と受入企業はこうした事態を重く受け止め、問題是正・不正行為撲滅に向けた最大限の努力をしていく必要があると考えています。
しかし、余りにも制度のマイナス面ばかりがメディアなどでセンセーショナルな形で取り上げられ、制度が本来果たしている意義や役割について一般に正しく理解されないまま、廃止が提言されているのは大変残念なことです。
日本弁護士連合会の指摘するように、制度下における不正行為は何としても撲滅されなければならないものですが、一方で同会の主張には、制度を廃止し非熟練外国人労働者受入れに舵を切ったところで、果たして人権侵害行為が撲滅できるのかという点で問題があります。
技能実習制度には、労働関係法令が適用されるのは当然のこととして、適格な受入企業の選定、事前講習の実施、配属後の定期訪問、監査、相談体制の構築などを通じた外国人保護の機能がありますが、非熟練外国人労働者が完全に自由な状態で入国してきた場合、それらの保護機能はどのように担保されるのでしょうか。
自由と引き換えに、外国人にも自己責任論があてはめられ、今以上に人権侵害行為が多発する可能性も否定できません。
そうなれば、日本社会の混乱や治安の悪化だけにとどまらず、日本に対する国際社会からの信頼が失墜することにもつながりかねないと危惧されます。
技能実習制度における類型別の不正行為件数(上陸基準省令)の推移
出典:法務省入国管理局の不正行為に関する広報資料(不正行為件数順に変更)
※本レポートは、㈱NCBリサーチ&コンサルティング機関誌『飛翔』2014年11月号に掲載された記事を転載しております。
なお、『外国人技能実習制度のこれまでとこれから』の過去記事は、当サイト 『国別情報一覧』に掲載しております。
- 【掲載元情報】
- 公益財団法人国際人材育成機構(略称:アイム・ジャパン) 会長 栁澤 共榮