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2014.12.04

ベトナムベトナム【ベトナム】エスネットワークス・ベトナム通信/第3回 「ベトナムからの事業撤退における留意点」
【ベトナム】エスネットワークス・ベトナム通信/第3回
◇『エスネットワークス・ベトナム通信』は、ベトナム進出のフルサポートが可能な株式会社エスネットワークスの現地法人
  ES NETWORKS VIETNAM CO., LTD.のハノイ、ホーチミンの駐在員、スタッフからの情報を皆様にお届けするレポートです。  
  ベトナム進出を検討する際にお役立ていただければ幸いです。

今回は、「ベトナムからの事業撤退における留意点」ついて、お伝えいたします。

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ベトナムに進出する日系企業数と投資額が増えている一方、ベトナムに設置した拠点を閉鎖する日系企業も増えている。
拠点の閉鎖といっても、駐在員事務所を閉鎖して現地法人を設立するような、新たな事業展開のために現拠点を閉鎖するケースも多い。
しかし今回のテーマは、そのような前向きな形での拠点閉鎖ではなく、ベトナムからの完全撤退、現地法人を閉鎖しての撤退であり、特に法務および税務上の留意点について解説する。
 
  1. 法的代表者の責任

ベトナムでは日本と同様、撤退・清算する会社の債務完済の責任は法的代表者が最も重くなる。
また、現在のベトナムの法規においては、会社はすべての債務を完済しなければ税務調査を受けることができず、清算手続きが結了しないことになっている。
外国法人において債務上のトラブルがあった場合、法的代表者は撤退手続き中の入出国に不自由することがある。
具体的には裁判所への出頭命令や債権者との話し合い等、ベトナム国内での義務に時間を取られることとなる。
更には、法的代表者が空港の入出国手続きを拒否されるケースもあるので留意が必要である。

ベトナムにおける会社の清算手続きは、非常に時間がかかるのが実情だ。
場合によっては2年、3年かかることもある。
主な要因は、会社清算のためには債務の完済が必要となることと、税務調査を申請しても税務調査員がなかなか来ないことである。
前者に関しては、清算するに至った主な原因は事業が想定通りいかなかったことであり、資金が不足する中、清算結了のためには債務を完済が必須であるという、根本的な矛盾を含んでいる。
後者に関しては、税務調査員にとって税金の徴収の可能性が低い場面で真面目に調査に取り組むインセンティブがない、ということがある。
いずれにしても清算申請後直ぐに税務調査員が来てくれたケースは、筆者の知る限り全くない。
資金がないので日本本社がベトナム子会社の債務を完済しても、税務調査が終わらずに清算結了とならないケースもしばしば見受けられる。

外国企業のベトナムからの撤退において、合法的な清算手続きを行わず、法人をそのまま放置する、いわゆる“夜逃げ”撤退が多数存在するのは上述のような理由がある。
 
  1. 税務会計上の留意点

清算手続きが結了しないことの弊害は、税務会計上の問題点としても現れる。
例えば、日本本社から投資したベトナム子会社の清算が結了しなければ、日本本社の法人税法上、当該子会社への投資(出資や貸付金)の評価損が損金算入できないこともあり得る。
日本本社としては、既に事業を停止して会計上評価損を計上しているのに、税務上いつになったら損金経理できるのか分からず、タックスプランニングが困難になる。

上記とは別に、外国人投資家の場合、ビジネスライセンスが取得できないためベトナム人の名義を借りて事業を営むケースがしばしばある(以下、「ノミニーケース」)。
日本企業の場合、飲食店(レストラン)の運営における名義借りが多い。
ノミニーケースではベトナム人名義の会社で事業を営むが、その運営上の資金は当該会社の法的な所有主であるベトナム人ノミニーに対して、資本金相当額の貸付金として渡すことになる。
あるいは、資金を当該会社の口座に直接払い込むケースもある。
しかし、いずれにせよ法的な意味で資本拠出がある出資者(所有主)になることはない。
当該会社の所有主として営業許可証に記載されるのはノミニーの名前だけである。
従って、当該払込資本の性質に関しては、会社の所有権が法的に担保されたものでなく、撤退あるいは当該実質持分の第三者への売却にあたって税務会計上の問題が必ず発生することとなる。
つまり、後日、当該資本の評価損や売却損を計上する場合、出資資本としての根拠がないため税務上の損金として認められない可能性がある。

税務上、といっても日本の税務とベトナムの税務とで取り扱いが異なる。
また、そもそもノミニーケースは合法的なスキームではないため、税務上の取り扱いを定めた規定が存在しない。
ノミニー出資が日本本社からの場合は日本の税務上の問題となり、ノミニー出資がベトナム現地法人からの場合はベトナム税務上の問題となることに留意が必要である。

以下、撤退におけるその他の留意点を列記する。
 
  1. 債務整理の優先順位
①就業規則及び労働協約に定められた給料、休職手当や社会保険など労働者の権利に関する債務
②税金債務
③すべての債務と清算費用を精算した後の残余財産の取り扱い
 
  1. 労働契約の解除と退職手当

従業員との契約を解除する際は、必ず労働組合と打ち合わせ行い、企業清算決定を出す30日前までに省級労働管理局に通知しなければならない。
失業保険に加入している企業は、12か月以上就業した労働者に退職手当を支払う義務を負わなくてよい。退職手当は失業保険基金から支払われる。
 
  1. 清算決定からの主な禁止事項

・財産の隠匿または分散
・債権の放棄または減免
・無担保債務から企業財産による担保付債務への変更
・企業解散を行うための契約以外の新規契約の締結
・財産の質入、抵当、贈与、賃貸

以上のように、ベトナムからの撤退は容易でなく、撤退を検討する段階で事前に複数の専門家と相談することを強くお勧めしたい。
 
    
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【本レポートに関するお問い合わせ・ご相談】
 東京: 株式会社エスネットワークス 担当 香取(k-katori@esnet.co.jp)まで
 ホーチミン: ES NETWORKS VIETNAM Co., Ltd. 担当 樋崎(y-hizaki@esnet.co.jp)まで
 会社名(屋号)、担当者様お名前、電話番号、メールアドレスに、問い合わせ内容を添えてメール願います。
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【掲載元情報】
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