2014.11.25
中国【中国】陳弁護士の法律事件簿⑯「社名変更による労働契約の解除通告は合法か?」
- 【中国】陳弁護士の法律事件簿⑯
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社名変更による労働契約の解除通告は合法か?
王さんは2013年9月にA社に入社し、A社と契約期間を2年とする労働契約を締結した。
しかし、2014年3月に投資者の変更により、A社は工商局で名称変更登記をした上で、社名をB社とし、法定代表者も変更した。
新社長は就任するとすぐにリストラを決定。王さんもそのリストラ対象者の一人となった。
リストラの決定が非常に不満である王さんは、「自分は仕事に対し真剣で責任感もあり、間違いを起こしたことがなく、会社は自分を解雇する権限はない」と主張。
しかし、人事部門は王さんに対し、「A社は既に存在せず、A社が雇用した労働者との労働契約も解除される」と通告した。
双方の協議は合意に達せず、最終的に労働仲裁を申請した。
『分析』
『労働契約法』第33条では、「雇用企業が名称、法定代表者、主要責任者又は投資者等の事項を変更しても、労働契約の履行に影響を与えない。」と規定している。
即ち、投資者又は投資者が任命する法定代表者の変更にかかわらず、雇用企業は法人の実体に変更がない限り、元の労働契約の双方主体の権利義務は変更されず、雇用企業と労働者の契約関係は継続することとなる。
従って、上述の人事部門の「会社が変わったため、労働契約は解除される」という主張は成り立たない。
ただし、雇用企業の名称変更に関する取り扱いについては、『労働契約法』及びその関連条例には明確な規定がない。
しかし、一部の地方の労働契約管理規定では、明確に規定されている。例えば『北京市労働契約規定』第27条では、「雇用企業に合併または分割などの状況が発生した場合、元の労働契約は引き続き有効とし、その権利と義務を継承する雇用企業は労働契約の履行を継続するものとする。雇用企業の名称が変更された場合は、労働契約書の雇用企業の名称を変更しなければならない。」としている。
また、『労働契約法』第35条では、「雇用企業と労働者は協議による合意の上で労働契約の約定内容を変更することができる。労働契約を変更する場合は、書面による形式を採用しなければならない。変更後の労働契約書は雇用企業と労働者がそれぞれ一部を保有する。」と規定している。
従って、本件のようなケースにおいては、雇用企業は名称変更の客観的事実を労働者に告知し、労働者と合意した上で労働契約を変更、書面による変更協議書を締結すべきである。
以 上
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- 【掲載元情報】
- GPパートナーズ法律事務所 パートナー弁護士 陳 文偉
- [略歴]
上海復旦大学卒業後、1992年日本に留学。
1995年から1999年まで九州大学法学部にて国際経済法を専修。
日本滞在中から日系企業に対し中国に関する法律相談や法務セミナーを実施。
1999年帰国後、活動の中心を上海とし現地の日系企業に対し法律サービスを提供。
中国における会社設立・M&A・清算、PL問題、労働訴訟等、日系企業の法的課題を多く解決。
[所属]
中華全国弁護士協会会員、中華全国弁護士協会経済法務専門委員会委員