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2014.10.30

ベトナムベトナム【ベトナム】エスネットワークス・ベトナム通信/第2回 「ベトナムにおける日本人駐在員の税務リスク」
【ベトナム】エスネットワークス・ベトナム通信/第2回
◇『エスネットワークス・ベトナム通信』は、ベトナム進出のフルサポートが可能な株式会社エスネットワークスの現地法人
  ES NETWORKS VIETNAM CO., LTD.のハノイ、ホーチミンの駐在員、スタッフからの情報を皆様にお届けするレポートです。  
  ベトナム進出を検討する際にお役立ていただければ幸いです。

今回は、ベトナムにおける日本人駐在員の税務リスクについて、お伝えいたします。

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1.概説

近年、ベトナム税務当局は、税務調査における重点調査項目として、日本人をはじめとする外国人駐在員に対する徴税を強化している。
以下に現地法人と駐在員事務所への税務調査について、よくあるケースを紹介する。

(1)現地法人の場合
初めての税務調査で駐在員の個人所得税だけを調査対象とするケースは少ない。よくあるのは、総合的な税務調査(法人税、付加価値税(VAT)、個人所得税)をきっかけにしての個人所得税違反の指摘である。
この場合、駐在員数が少ない現地法人では指摘を受けるケースは少ないと言われているが、一回指摘を受けると以降念入りにチェックされるため、少人数でもしっかりした個人所得税の申告・納付が重要である。

(2)駐在員事務所の場合
駐在員事務所には、付加価値税(VAT)及び法人税の義務がないため、個人所得税の調査だけを受けることになる。
特に、駐在員数が多い、人事異動が多い、出張者が多い事務所は入念にチェックされる。
1回の税務調査で、日本円で数百万円、数千万円の罰金が科されたという話もある。
エリアによっては、証憑(レッドインボイスやレシート)がない駐在員事務所の支出は、駐在員事務所の所長の収入とみなされたケースもあり、この場合、説明できない(証憑がない)費用に対する所得税が徴収されるリスクがある。

駐在員の個人所得税の税務リスクが高い背景は以下のとおりである。

・外国人の個人所得税に関する計算・申告に精通している経理担当者が少ない。
・法人税や付加価値税ほど、真剣に対応されていない傾向があり、申告ミスも多い。
・駐在員の所得としてカウントされる費用について注意を要する項目がある。
 例:年1回以上の帰国の飛行機代は課税対象
    赴任時の手当は非課税、その後の帰国手当は課税対象
    出張目的であることが説明できない駐在員に対する経費の支払は課税対象
・駐在員の人事異動が多い場合、毎回の赴任と帰任に関る手続きにミスが起こりやすい。  
 (特にホーチミン市においては赴任時に個人所得税申告がある。また地域に限らず帰任時は帰国確定申告が必要。)
・出張者に関わる申告・納税を怠る会社が多い。

2.長期出張者等に関する注意点

2011年以降、日系企業のベトナム進出増加に伴い、日本人ビジネスマンの往来も増加。
そのような中で、長期出張者や出張頻度の多い会社からの労務や個人所得税に関する相談が増加している。
以下に長期出張者に関する注意点を述べる。

(1)個人所得税の申告 
まず、税務上の居住者になるか非居住者になるかの確認が必要。居住者とその課税年度の定義は下記のとおり。

①居住者の定義
ベトナム国内法の規定では、以下に当てはまるものを居住者とする。

ア) ベトナム国内に暦年で183日以上滞在するもの。
入国初年度は、暦年ではなく最初の入国日から365日で計算される。例えば2012年10月1日~2013年4月30日まで滞在した場合は、それぞれの暦年では183日未満であるが、居住者扱いとなる。また、入国日と出国日は合わせて1日として計算される。

イ) ベトナム国内に定常的な住居を有するもの。ここでの定常的な住居は以下のものである。
 ・恒久的住居(外国人の場合、Residence Cardに登録された住居)
 ・課税年度で、契約期間が183日以上の賃貸住宅等(ホテル、事務所、作業場を含み、契約の名義が個人であるか法人であるかを問わない)
従って、滞在期間は3ヶ月以上~183日未満であっても、課税年度で契約期間が183日以上の賃貸住宅等(ホテル、事務所、作業場を含み、契約の名義が個人であるか法人であるかを問わない)の契約が締結された場合、居住者とみなされる。

(2)居住者と非居住者の場合の個人所得税申告制度の違い
外国人の個人所得税申告は、居住者か非居住者かの判断によって、課税所得の範囲と税率が異なる。
居住者である場合、ベトナム国内にて発生する所得のみならず、課税年度において発生する全世界の所得も課税対象であり、個人所得税(PIT)の課税率は5%~35%の累進率となる。
一方、非居住者である場合、ベトナム国内にて発生する所得のみが、PITの課税対象であり、課税率は一律に20%となる。
なお、非居住者の場合、その課税所得からの基礎控除(900万ドン)及び扶養者控除(360万ドン/1人)等ができない。

(3)居住者の課税年度の定義
以下の2通りがある。

①暦年内にベトナム国内に183日以上滞在したものであれば、当該暦年となる。
②暦年内のベトナム国内の滞在日数が183日未満であるが、入国初日から連続する12ヶ月間においての滞在期間が183日以上の場合、課税年度はその入国初日からの12ヶ月間となり、2年目以降の課税年度は暦年となる。

(4) 短期滞在者の免税措置
例:3ヶ月以上~183日未満での滞在になる場合、外国人の個人所得税(PIT)の申告はどのようになるか?

日越租税条約での取扱いがあり、役務提供地課税の原則の例外として短期滞在者の免税措置がある。当該短期滞在者に関わる免税条件としては以下の3つ。

 ①暦年におけるベトナム滞在日数が183日未満であること
 ②報酬の支払者がベトナム居住者でないこと
 ③報酬がベトナムにある恒久的施設(PE)等により最終的に負担されないこと

基本的に日越租税条約の条件を満たす場合には租税条約の規定が優先して適用されるので、上記の条件3つを満たせば原則免税されることになる。
しかし、当該免税規定は無条件に自動的に適用されるわけではなく、税務当局に対して免税適用に関する各種書類の用意、申請手続きを完了させない限り認められない。
また、そもそも当該免税申請は、申請者自身が自ら免除対象だと判断して申請する手続であり、申請時点では免税申請書類を受取る税務署から免税証明のような書面は交付されない。
したがって、この免税申請さえしておけば大丈夫というものではなく、将来の税務調査で課税対象者であると言われる可能性があり、源泉徴収及び罰金を請求されるリスクは完全には除去できないことに留意されたい。

(5)短期出張者も税務リスクの対象
例えば親子会社間の業務委託契約の遂行の為に短期間ベトナムに出張する出張者(例:1ヶ月未満の現地技術指導)でも課税対象になる。
しかし、出張者の所得税の申告・納税を失念する会社は多い。また、出張期間があまりに短い場合、申告・納税には手間が掛かるので、納税しないケースも多く見受けられる。
間違った納税ルールを採用したがゆえに、個人所得税及び外国契約者税(本社の子会社に対するサービス提供)の両方を指摘される可能性もあるので、特に出張者が多い会社は現地の税務に詳しい会計事務所に相談をすることを強くお勧めする。
以上
 
    
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【本レポートに関するお問い合わせ・ご相談】
 東京: 株式会社エスネットワークス 担当 香取(k-katori[アットマーク]esnet.co.jp)まで
 ホーチミン: ES NETWORKS VIETNAM Co., Ltd. 担当 樋崎(y-hizaki[アットマーク]esnet.co.jp)まで
 会社名(屋号)、担当者様お名前、電話番号、メールアドレスに、問い合わせ内容を添えてメール願います。
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