飲食業界で働く人材の育成を行う単科大学「デュシタニ・カレッジ」と辻調理師専門学校が提携。
2013年1月から日本人による、日本料理の授業が始まった。
先付、椀、造り、焼き物、煮物、揚げ物、八寸、酢の物、食事、甘味(デザート)に至るまで、一通りの料理を学生たちは学ぶ。
その教壇に立っているのが、松岡玄明さん。
「私の知っていることは、すべて教えたい。すべて注ぎ込みたい」と話す。
辻調理師専門学校 日本料理 松岡玄明氏
「デュシタニ・カレッジ」はこれまでにもフランスのコルドン・ブルーと提携し、フランス料理と菓子の専門学校をバンコク市内に開校するなど、外国の食文化教育を積極的に取り入れている。
その一環として、日本の辻調理師専門学校と提携、今回の日本料理クラスの開講を皮切りに、いずれは専門学校の設立を視野においている。
バンコク市内に日本料理及び日系フュージョンのお店は1,000~2,000店だといわれている。
その中での開講について松岡さんはこう話す。
「飲食業界を目指すタイの人たちは、日本料理はこれからも伸びる分野だと思っています。
だから、何でも知りたい、何でも聞きたい。質問攻めで、授業の時間が足りないほどです」。
開講までに用意していたテキストのメニューは、覚えやすいように、先付はアミューズに、焼き物はメインにと言葉を変換していたが、学生のニーズは「これを日本語で覚えたい」。
「あわててテキストを日本語に変更しましたが、嬉しくもありました。言葉も文化ですし、その言葉の意味に日本料理の原点がありますから」。
日本料理といえば、だし。
「ひき方をきちんと知ることも重要ですが、昆布とかつおの相乗効果である“うま味”についても教えています。
こうすれば美味しくなるという“まるのみ”型の教育ではなく、意味を理解して欲しいからです」。
松岡さんはさらに「日本人が日本料理を海外に伝えていくには限界があります。
これからは、日本料理の基礎教育を受けた外国人が世界中で日本料理を広めていって欲しいと思いますし、その上で、現地の味覚にあう進化を遂げてもいいと思います。その先駆けになるのがバンコクです。日本料理の魂を伝えたいですね」。

左から、松岡氏の授業風景/1月16日に行われたオープニングレセプション
先にも書いたように、デュシタニ・カレッジと辻調理師専門学校は今後、独立した専門学校の設立を視野に入れている。
今回はその試験的な試みである。
専門学校ができたら、タイはもちろん、周辺のアジア各国から学生を受け入れることができる。
伸び盛りのミャンマー、日本料理店が増え続けるベトナム、近隣のラオスなどでも、日本料理を学びたい学生は多いといわれている。
とかく私たちは、海外のユニークな日本風料理を「正しくない」と語りがちだが、それも近いうちになくなり、今度は彼らが独自に進化させたものを、私たちが学ぶ日がくるのかも知れない。
松岡氏が教える日本料理クラスには、パブリックという一般の方でも学べるコースがある。
10回セットで6万バーツ(約18万円)。こちらには現在8名の生徒さんがいる。レストランのシェフやオーナー、さらに富裕層の方などが中心。
「寿司や会席など毎回様々な料理を教えます。こちらも学生に負けず劣らず真剣です。
プロの方もいらっしゃいますが、このクラスは主婦の方が増えて、タイの家庭でも日本料理を作る人が増えることを願っています」。
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