
金魚売りの行商。空気と水の入った袋に色とりどりの金魚が入っている。1つ10バーツ(約30円)。
■効果着々、タイの食生活改善。砂糖の次は塩を減らします。
今年5月から始まったタイのテレビCMが静かなブームとなっている。
配給元は「Thai Health」の愛称で知られる「タイ保健振興財団」。塩分の摂り過ぎがタイ国民の健康を損ねているとして、現役の医師団やテレビタレントを総動員しての熱の入れようだ。
今回、放映したテレビCMは全3部作。著名な現役医師19人が次々に登場し、「タイ人は塩分を摂り過ぎ。必要量の2倍にも」と口々に訴えていくのが1作目。
第2、第3作目は若者に人気のテレビタレントを多数出演させ、世代を超えた浸透を図った。
「塩分半分で、タイ人は病気から逃れられる。あなたは健康になる。簡単な方法」。人気は上々で健康意識の高い人からは「減塩」という言葉も聞かれる。
しかし、ナンプラー(タイの魚醤)やカピ(エビを発酵させた調味料)を多用するなど、何かと塩分過多になりがちなのがタイ料理。
食卓にはいくつもの調味料が置かれ、自分流に味を整えるのがタイ式とあって、ついつい摂り過ぎてしまう。
バンコク病院のウボン医師によれば、最近はタイ人の高血圧患者が増えているといい、中には動脈硬化や甲状腺機能障害を患う人も。
「塩分は現状の半分で十分」と話す。
減塩キャンペーンを繰り広げているタイ保健振興財団は、2001年に成立した健康増進法に基づいて設立された。
肥満、糖尿病、高血圧など生活習慣病が深刻になったタイで、国民の健康への関心を高めようと政府から独立した機関として発足した。
これは政府組織が変わっても目標を変えず、施策をやり続けるためだ。
年間の運営予算約9000万米ドル(約90億円)は、アルコールとタバコ業者から〝徴収〟した特別税が主な財源。
スタッフに内外のNGO団体などから多彩な人材を登用している。
■砂糖の摂取量が減ったタイの食生活
タイ保健振興財団が行っている施策として有名なのはタバコとアルコールだが、その他に、メタボリックシンドローム症候群、5 A DAY(1日に5皿分/350g以上の野菜と、200g以上の果物を食べましょうという運動)など多岐にわたっている。

野菜と果物の摂取の重要性をビジュアルで伝える 5 A DAY の販促ツール
中でも肥満防止に向けた活動で印象的だったのは「砂糖の摂取を減らそう」というもの。
1日にティースプーンにおよそ20杯の砂糖を摂取するといわれるタイ国民に対して様々な施策を行った。
子どもの肥満を減らすために、乳児向け粉ミルクに砂糖の添加を中止させる法的手続きをとったり、小学校でのソフトドリンク飲料の摂取禁止を認めさせた。
こうした子ども向けは規則としてすすめられるが、やっかいなのは大人である。
先に述べたように、タイ人の食生活は食卓で好きな調味料を足して食べる。ここに砂糖がないというのはあり得ないこと。
それでも、タイ保健振興財団は活動に一定の効果があったと話す。
それをあらわすように「国家統計局データ」によると、確実に砂糖摂取量は減っているのだ。
さて、そこで今回は「減塩」である。
タイ保健振興財団の事務局は「健康に対する国民的な関心の高まりが背景にある」と話している。
日本でもその昔は砂糖の入らないコーヒーは考えられなかったし、醤油辛いおかずをたくさん摂取してきた。
しかし高血圧や脳卒中などの要因として塩分を減らす食事をし、太らないため、あるいは糖質を制限するために甘くない食品を選ぶようになった。
現在スーパーで並ぶ調味料も、そうした長年の健康ニーズに沿って変化したものである。
甘い、辛い、酸っぱいタイの料理は、健康志向の高まりでどんな風に変化するのだろうか。
また、2011年のデータによると、タイでも出生率が1.8人にまで低下した(20年で半分に)。
今後、急速な高齢化も進む。食への関心は、先進諸国と同様に、確実に「健康」に向いている。