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2025.05.08

インドインド【インド】弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ/第27回/「資産の保有(不動産)」(インド編⑯)
【インド】弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ/第27回/「資産の保有(不動産)」(インド編⑯)
◇「弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ」は、弁護士法人マーキュリー・ジェネラル様からのアジア各国の国別情報を進出~撤退までの“シリーズ”で皆様にお届けします。

資産の保有(不動産)

日本の登記制度とは異なる土地の登録・記録の制度等があり、以下の特徴があります。


1.不動産法制

(1) 不動産の定義
インドにおいても日本と同様に、理論的には建物が土地と別個の不動産として、独立して取引及び登録の対象とされています。

(2) 土地に関する主な権利
土地に関する主な権利として、以下の2つがあります。

 ①Freehold:日本における所有権と同様の、土地に関する完全な法的所有権
 ②Leasehold:賃貸人との間のリース契約により一定期間土地を利用できる権利
 なお、後者は日本における賃貸借に類似していますが、第三者に対しても権利を主張できるという特徴があります。

(3) 取引に関する文書の登録
不動産の売買及び賃貸借等の取引を有効に行うためには、原則として(100ルピーの価値未満の不動産の権利譲渡及び1年未満の賃貸借等の例外を除き、)、取引に関する文書の作成及びその文書の登録が、取引の効力の発生要件として必要です。

2.不動産登記制度
 
(1) 取引に関する文書の登録義務
不動産に関する権利の譲渡等に関する文書(売買契約書及び賃貸借契約書等)の登録が、原則として義務づけられており、登録がなければ、当該取引は無効とされます。

(2) 権利に関する情報の不存在
上記のように、インドでは、不動産の権利関係の変遷に関する文書が登録される一方で、日本の不動産登記のように所有者等の権利に関する情報が登録・管理されるわけではありません。

(3) 土地情報の電子化の推進
インド政府は、土地の生産性の持続的向上及び土地資源の利用の最適化等を目的として、2016年から、Digital India Land Records Modernization Programme (DILRMP)を推進しており、権利の記録を含めた土地の記録のデジタル化及びオンライン化による、不動産関連の紛争の減少及び権利移転手続きの簡素化が期待されています。

3.権利確認

(1) 権利調査
前述のとおり、インドの不動産登記制度においては、過去の取引等の文書が登録されるだけで、権利関係の一覧性がないため、土地に関する取引を安全に行うためには、デュー・ディリジェンスを実施して、長期間にわたり登録されている各文書等を逐一確認して権利調査をする必要があります。また、各州法と現地語の理解や現地調査が必要になることも多く、この作業は容易ではありません。

(2) 土地権限保険
土地権限保険とは、不動産取引に関して対象の不動産の権利の問題が発覚した場合の損害を補償するものです。インドにおける権利調査は容易ではないため、土地権限保険の利用も考えられますが、この保険は米国で多く用いられている一方で、インドでは未だ広く普及していません。


4.工業団地

上記の権利関係のリスク及び土地利用に関する各規制の遵守の観点から、インド国外の会社がインドに進出するために、土地開発公社の運営する工業団地の土地の購入又は賃借をすることも多くあります。
①土地開発公社が当該土地を取得するに際して権利確認をしているため権利関係のリスクが比較的低いこと、②地域・環境等の土地利用に関する各規制の確認や手続きが土地開発公社の関与により効率的かつ簡素になること、③土地開発公社により電気及びガス等のインフラが整備されていること等が、工業団地の利用のメリットです。

他方で、①土地開発公社が用意した契約雛形を修正する余地が少なく、不利益な条項を受け入れざるを得ないこと、②期待していた土地利用規制の確認やインフラ整備が不十分であるリスクがあること、③土地の価格が比較的高いこと、④土地の元の所有者が、土地開発公社による土地収用の価格が不当に低額であったとして、適正な価格と実際の収用価格との差額の支払い等を請求して訴訟を提起するという紛争事案が散見されるところ、土地開発公社から工業団地の入居者が紛争対応の費用負担や土地開発公社敗訴の場合の差額支払の負担を求められるリスクがあること等がデメリットです。

5.不動産取引に関する外資規制

(1) 不動産の取得・保有
①インド国内で登録又は設立された法人、及び②外国会社のインド国内の支店、プロジェクト事務所、又はその他の事業拠点(ただし駐在員事務所を除く)は、その事業遂行のために不動産を取得・保有することができます。なお、②の場合には、取得日から90日以内に、インド準備銀行に対して所定の様式で届出をしなければなりません。

(2) 不動産業
不動産業は、不動産から利益を得るためにこれらを取引する事業であり、不動産業についての外国直接投資は原則として全面的に禁止されています。但し、不動産業には、タウンシップの開発、住宅/商業施設、道路、橋梁、教育機関、娯楽施設、都市・地域レベルのインフラ及びタウンシップの建設並びにREITに関する証券取引委員会規則に基づくREITを含まないとされています。
また、賃貸借による賃料収入及び不動産仲介も上記「不動産業」に含まれないとされています。
なお、タウンシップの開発及び住宅・商業施設の建設等は、上記の全面的禁止の対象ではありませんが、「建設開発プロジェクト」として、撤退等について一定の制限を受ける可能性があります。

 
以上
※本稿の著作権は、弁護士法人マーキュリー・ジェネラルに帰属しています。
   第17回に続きます。

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○《インド編》第15回「労働法(その⑥)」 
【掲載元情報】
弁護士法人マーキュリー・ジェネラル  制作

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