2024.04.01
ベトナム【ベトナム】弁護士法人One Asia/第33回「ベトナムの個人データ保護政令に関する最新情報」
- 【ベトナム】弁護士法人One Asia/第33回「ベトナムの個人データ保護政令に関する最新情報」
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◇ベトナム
2023年7月1日、「個人データ保護に関するDecree No.13/2023/ND-CP」(以下「PDPD」といいます)が施行されました。PDPDについては、ベトナムで初めての個人情報に関する統一的な政令として、政令施行時から現在まで多くの日系企業の方が関心を示され、弊所にも多くのご相談をいただいております。
今回は、PDPDに関する最新情報として、公安省による個人データ保護に関する現状分析報告書の概要をご紹介させていただきます。法令化の提案がなされるなど、更に状況が変化する可能性があるため、PDPDに関する情報は引き続き注視が必要です。
1. 公安省による個人データ保護に関する現状分析報告書
「個人データ保護」に関して、2024年2月29日付で、ベトナム政府ウェブサイトの「法律規範文書草案にかかるパブリックコメント」[1]ページに、「『個人データ保護法』制定提案」という書類が掲載されており、公安省は「個人データ保護法」の制定を求めており、制定に向けて国内外の組織、機関から広く意見を求める旨が、告知されています[2]。
掲載されている書類は、以下の2つの報告書です。
・個人データ保護に関連する社会的関係実情評価報告書案[3]
・個人データ保護法制定提案にかかる政策の影響評価報告書案[4]
なお、公安省ウェブサイトにも同様の書類が掲載されており、2024年3月1日から4月1日までパブリックコメントを募集するとされています[5]。
2. 現状分析報告書案の概要
「個人データ保護に関連する社会的関係実情評価報告書」案では、個人データ保護に関する法整備状況をはじめ、個人データ保護に関連する社会的側面に関する検討、分析がなされています。
「個人データ保護法制定提案にかかる政策の影響評価報告書」案では、個人データ保護に関する全体的な問題点や、制度・政策面での問題点や対策などが記載されています。
両報告書では共通して、ベトナムにおいては、「個人データ保護」に直接的に関連する法規文書が計69本あるものの、「個人データ」、「個人データ保護」の考え方やその内容が不統一であり、PDPDについても、政令でしかないため、今後は、個人データ保護に関連する語彙の定義から整理した網羅的な法律を整備して、制度を整える必要があることが訴えられています。
また、本報告書案では、PDPD上、個人データ保護に関する専任機関[6]が定められているものの、法律によって定められているわけではないこと、個人データ保護に関する規定の実行にかかる行政手続きについて規定した法律がないことなども、個人データ保護対策上の問題点として記されています。
3. 終わりに
パブリックコメントの募集がなされている本報告書案には、施行中のPDPDの今後の取り扱い方針や、「個人データ保護法」の具体案、制定スケジュール等に言及されているわけではありません。もっとも、PDPDが施行され、運用の主体となっている公安省自身がPDPDの課題について言及し、現状をまとめている報告書として、今後の個人データ保護に関する動向を把握するうえで有益なものといえます。
「個人データ保護法」が、今後どのような法律になるかは現時点では明らかではありませんが、個人データに関する政令を法律レベルに格上げしたうえで整備していくという方向性を示しており、また運用体制も今後整えられていくと思われます。日系企業は、引き続き、現行のPDPDの運用状況を確認しつつ、今後もベトナムにおける個人データ保護の法令の整備・運用について注視しておくことが推奨されます。
[3] Báo Cáo Đánh giá thực trạng quan hệ xã hội liên quan bảo vệ dữ liệu cá nhân[4] Báo Cáo Đánh giá tác động của chính sách trong đề nghị xây dựng Luật Bảo vệ dữ liệu cá nhân[5] https://bocongan.gov.vn/pbgdpl/van-ban-du-thao/du-thao-ho-so-de-nghi-xay-dung-luat-bao-ve-du-lieu-ca-nhan-430.html[6] PDPDでは、公安省ネットワークセキュリティ・ハイテク犯罪防止局が専任機関として定められている(PDPD第29条1項)
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(ご参考)
本ニュースレター(2024年3月5日号)
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〇第30回 【シンガポール】「第5回 シンガポール新法紹介/小売店舗用賃貸借契約法案(2)」
〇第31回 【シンガポール】「シンガポールの知的財産法の特徴」
〇第32回 【マレーシア】「マレーシアにおける“Play to Earn”モデルとNFT」
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