2023.05.26
インド【インド】弁護士法人One Asia/第15回「インド 労働者の最低賃金」
- 【インド】弁護士法人One Asia/第15回「インド 労働者の最低賃金」
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今般、デリーの最低賃金改定が発表されました。本ニューズレターでは、インドの最低賃金に関する留意点や、日系企業の拠点数の多いインド主要都市における最新の最低賃金を紹介いたします。
インドでは州ごとに最低賃金が異なります。インドは連邦制国家であり、中央政府は一部の産業について最低賃金を定めていますが、その他の多くの業種では各州が経済状況に応じて最低賃金を設定しています。職種や労働者のスキルレベルによっても異なる最低賃金が定められており、州ごとに分類の仕方も違い、数十種類にわたるカテゴリーに分かれている州もあります。
また、最低賃金は定期的に見直されますが、その見直しのタイミングは州によって異なります。インフレーション率や生活費の上昇、労働市場の状況を踏まえて年次ベースで見直しが行われる場合もあれば(毎年4月に改定されることが多い)、特定の需要が生じたときや労働者団体からの要求があったときなどにのみ最低賃金が調整される場合もあります。さらに、例えばムンバイは半年で20%ほど最低賃金が引き上がったこともあり(2020年1月と7月の比較)、変化も激しいため注意を要します。
日系企業拠点数の多いインド各都市が所在する州における、非熟練労働者と高技能労働者のカテゴリーに相当する最新の最低月給は、以下のようにまとめられます。
単位:ルピー(小数点以下切り捨て)州(主要都市) 非熟練労働者等の最低月給(※) 高技能労働者等の最低月給(※) マハラシュトラ州
(ムンバイ)11,272 – 12,465 12,884 – 14,076 ハリヤナ州
(グルガオン)10,098 11,133 タミルナドゥ州
(チェンナイ)10,305 – 10483 10,905 – 11,047 カルナータカ州
(ベンガルール)12,846 – 14,424 17,159 – 19,259 グジャラート州
(アーメダバード)11,466 – 11,752 12,012 – 12,324 デリー準州
(デリー)17,234 22,744 ウッタル・プラデシュ州
(ノイダ)10,089 12,432
※ 同じ職種でも州内のエリアごとに最低賃金が異なる州もあるため、数値に幅があります。
チェンナイのようにスキルによりほとんど最低賃金に差を設けていないエリアがあれば、デリーのように大きな差を設けているエリアもあります。マハラシュトラ州は、ムンバイやプネといった大都市での警備員など特定の業種については、最低賃金の水準を高く設定していますが、その他の多くの職種については一律の水準です。
比較した州の中では、デリーの最低賃金水準の高さは突出しており、州境を超えて通勤する労働者も多いグルガオンやノイダの賃金と対照的であるといえます。また、ムンバイはデリーよりも物価が高く、平均賃金も高い傾向にあるにもかかわらず、最低賃金にはその傾向が十分に反映されていない点にも留意が必要です。
最低賃金は労働者が生計を立てるための最低限の保証として、州全体の指標として定められています。しかし、ムンバイやグルガオンの例のように、最低賃金が必ずしも労働者の経済圏における生活費をカバーする十分な額であるとは限らないケースもありえます。
インドでインド人を雇用する日本企業においては、このような観点も考慮した上で、事業所の所在する各州(本社だけでなく、拠点ごと)の労働省や関連政府機関のウェブサイトを定期的にチェックする、現地の労働法専門家と連携する(州レベルの通知は、英語版がないケースも多く見られます。)、などの対策により最新の最低賃金の情報を確認し、労働者への公正な賃金を定期的に見直すことが求められます。
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本ニュースレター(2023年5月12日号)
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〇第12回 【インドネシア】「新法令:新首都「ヌサンタラ」への投資に関するインセンティブプラン」
〇第13回 【シンガポール】「シンガポールを利用したインドの紛争解決(1)」
〇第14回 【ベトナム】「ベトナム個人情報保護に関する政令の概要」
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