2013.03.25
- その他のアジア【アジア】アジア通信/第13回 メコン地域「カンボジア・ミャンマー 進出編①」
- 【アジア】アジア通信/第13回
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第11回、12回は、カンボジア及びミャンマーの概況を紹介いたしました。両国とも開発が進んでおらず、まだ、日系企業の進出もそれほど多くありません。今回は、中堅中小企業のカンボジア・ミャンマー進出について述べます。文中の番号は、前回からの通し番号となっていますので、今回は3.から始まります。
3. 中堅中小企業のカンボジア・ミャンマー進出
(1) 進出に際しての検討事項
ここでは、製造業の進出に際しての検討事項を述べます。カンボジア・ミャンマーには、人件費が安い反面、電気代が高い・電力供給が不安定という特徴があります。そのため、一般に労働集約型産業に適している地域といわれています。加えて、次のポイントを押さえることも重要です。人件費が安いから、労働集約的だから、という理由だけで進出することは危険です。
① どの地域から調達し、どの地域に販売するか?納期に余裕はあるか?多量の販売(生産)数量を確保出来るか?
ミャンマー ティラワ工業団地予定地
2012 年9 月筆者撮影
いずれの国も、産業集積が進んでいないため、現地・近隣地域からの調達、現地・近隣地域への販売が出来ない場合があります。このような場合には、輸送費の増加に加え、原材料等調達から販売までのリードタイム伸長のデメリットが、人件費の安さというメリットを帳消しにしてしまう場合があります。リードタイム伸長のデメリットとは、例えば、資金繰りの逼迫などです。詳しくは、アジア通信第5回から第7回をご参照下さい。
このような場合には、少なくとも物流リードタイム分、納期を長く取る必要があります。無理な納期を設定すると、結局納期に間に合わなくなり、エア便で製品を輸送⇒人件費メリットを減殺、という事態に陥りかねません。
以上から、カンボジア・ミャンマーでの製造に適した製品について、短納期対応ではない製品、流行に左右されない定番品・ライフサイクルの長い製品、需要予測のズレ・需要の変動幅が小さい製品、というキーワードが考えられます。
また、これらのキーワードに沿った製品は、その製品一単位数量当たりの限界利益(≒付加価値)が小さく、損益分岐点販売(生産)数量が多量になる傾向にあります。多くの場合、多品種少量生産ではなく、少品種多量生産または多品種多量生産に適することになりそうです。
以上に述べたキーワードは、規模の大きい企業に有利に働く要素であることを、十分ご留意ください。
② 投下資金の回収期間は?
カンボジア・ミャンマーが発展するに連れ、人件費も上昇していくことになります。そのため、人件費が上昇して黒字を確保出来なくなるまでに、現地に投下した資金を回収する必要があります。投下資金を借入金によって調達する場合には、この点、特に重要です。
③ 事業計画の策定
進出に際しては、以上①②その他の項目を検証するため、事業計画を策定する必要があります。この計画は、資金計画・損益計画だけでなく、貸借対照表計画を含みます。計画は、どこまで精密に作っても計画に過ぎませんが、それでも、あまりにも無理な投資になっていないかどうかを検証するためには、十分役に立つものです。
また、事業計画を策定することにより、現地法人等の経営において、どの項目を重点的にチェックすべきかを事前に明確にすることが出来ます。
④ 撤退時のシミュレーション
撤退時のシミュレーションを事前に行うことも必要です。進出段階で撤退時のシミュレーションというのは、必勝の信念に水を差すような話ですが、進出以上に撤退は難しいものです。撤退したくても、お金が無くて、出来ない企業もあります。予め、退職金等の撤退に必要な資金を見積もり、計画に織込んでおくことが得策と考えます。
⑤ 労務
一概にカンボジア人ワーカー・ミャンマー人ワーカーの気質・特徴を語ることは難しいのですが、日本人のそれとは異なる点が多々あることは間違いありません。この違いが、現地での経営を難しくすることはいうまでもありません。その対応として、日本に留学経験のあるカンボジア人・ミャンマー人を採用することも検討に値します。彼等彼女等は、文化や言葉のギャップを埋めてくれるだけでなく、現地の水先案内人にもなってくれます。日本に在留するカンボジア人の数は、2,700人弱、ミャンマー人は8,600人弱です。
次回へ続く

- 【掲載元情報】
- 山田ビジネスコンサルティング株式会社 専務取締役シンガポール支店長 東 聡司
- [略歴]
山田ビジネスコンサルティング(株)創業以来、日本国内の中堅中小企業の再生支援業務に携わる。
2012年1月~2月にかけて中国進出日系企業の経営状況を調査。
2012年4月のシンガポール支店長就任後はタイ・インドネシア・ベトナム等ASEAN各国に進出している日系企業の経営状況を調査。
経営の観点から日本企業のアジア進出をサポートする。