国別情報一覧

HOME > 国別情報一覧 > その他のアジア > 詳細

国別情報一覧

2013.03.11

その他のアジア【アジア】アジア通信/第12回 メコン地域「ミャンマー編」
【アジア】アジア通信/第12回
今回は、前回のカンボジアに続き、メコン地域の中で、特に注目度が高く、それでいて、日系企業の進出がまだそれほど進んでいないミャンマーの概要を紹介いたします。

2.ミャンマー

 ミャンマーの人口は約6,200 万人※5(4,800 万人※6)、GDP は519 億ドル(一人当たりGDP832 ドル)※7と、カンボジア同様経済発展が後れています。 政治面でも長らく軍事政権が支配する体制が続いていましたが、テイン・セイン大統領による民主化路線の推進、欧米の経済制裁措置の一部停止など、ミャンマーの経済発展を妨げる要因が取り除かれつつあります。言い換えますと、今まで手ぐすねを引いて、進出機会をうかがっていた欧米・日本等の企業が堰を切ったように進出する可能性があるということです。

  
ジェトロ資料:2010 年の直接投資額が突出しているのは資源投資が集中したため。

(1) 日本との関係
 日本政府からの最近の援助額は、2009 年度49 億円、2010 年度31 億円※8と、カンボジアと比べて低い水準です。2003 年5 月のアウン・サン・スー・チー氏拘束以降、経済協力を基本的に停止していたためです。しかし、本年(2013 年)1 月に総額約1,989 億円を限度とする円借款貸付契約に調印が行われるなど、今後はミャンマーへの援助額は増加することになりそうです。援助の対象は、ティラワ地区開発事情(経済特区周辺インフラ、港湾整備)、緊急リハビリテーション・増強事業(セメント、火力発電等)、地方開発・貧困削減事業(7 地域・7 州の基礎インフラ整備)、ヤンゴンのインフラ整備(電力、都市交通、上下水)、全国インフラ網(エネルギー、運輸、通信、金融)、農業・地方開発(灌漑・地方インフラ)などです※9

(2) 投資環境
 ミャンマーは、カンボジアよりも、インフラが脆弱です。電力・道路・鉄道・港湾・通信その他、全てのインフラといっても大げさではありません。産業集積も進んでいません。工業団地の選定に際しても、インフラの整備状況の確認に特に注意を払う必要があります。これらの不足は、経済発展の伸びシロの大きさも表しています。
 外資規制を定めた外国投資法の改正法が昨年(2012 年)11 月に成立しました。国内企業保護色が強かった旧法と比べて、新法は、外資積極誘致色を強めたものの、外資投資決定をミャンマー投資委員会(MCI)の裁量に委ねるなど、依然不透明感が残るものになっています。
 人件費は安く(1.カンボジア(2)投資環境 グラフ1)、識字率も92%以上(15 歳以上)と高い水準にあります。ちなみに、ミャンマー人は英語を話せる人の割合が高いという意見もありますが、実際には、40 歳代未満の世代になると英語を話せる人が極端に少なくなってしまうようです。

(3) 日系企業の進出状況
 ミャンマー進出日系企業は、2012 年10 月現在で91 社※10となっています。主要進出日系企業は、クボタ、YKK、ハニーズなどです。また、スズキ、ロート製薬、ローソン、コナカその他多くの企業が進出を表明しています。

 今のミャンマーは、他国より発展が後れていますが、太平洋戦争前後のミャンマーは、東南アジアで最も進んだ国であり、最も独立の気運が高かった国であったそうです。ところで、ヤンゴン市内でタクシーに乗っていて、とても気持ち悪く感じるのは、自動車が右ハンドルでありながら右側通行であることです。右ハンドルは、自動車のほとんどが日本の中古車という事情によるものですが、右側通行としているのは、旧支配国イギリス(左側通行)に対する反発心からだそうです。この辺りもミャンマー人の独立心を象徴しているのかもしれません。
 シンガポールの元首相で建国者のリー・クアンユー氏もシンガポールの都市計画に際して、ヤンゴンを参考にしたそうです。



ヤンゴン市内の裏通り 2013 年1 月筆者撮影
裏通りのホテルでもシングル1 泊90 ドルと決して安くはない。

 また、ミャンマーは、タイ・中国・バングラディッシュ・インド・ラオスと国境を面し、ベンガル湾にも面しています。更に、経済回廊を経由してベトナム・カンボジアとも繋がっています。つまり、様々な地域への供給基地として、とても便利な場所ということができます。
 これらを考えると、ミャンマーが先を行く東南アジア諸国に追いつくのに、そんなに時間はかからないかもしれません。

以下次回に続く

※5 IMF 推計値
※6 国連予測値
※7 ジェトロ資料「東アジア各国・地域の経済力比較(2011 年)」より
※8 外務省資料より
※9 JICA 資料より
※10 帝国データバンク調査

【掲載元情報】
山田ビジネスコンサルティング株式会社 専務取締役シンガポール支店長 東 聡司
[略歴]
山田ビジネスコンサルティング(株)創業以来、日本国内の中堅中小企業の再生支援業務に携わる。
2012年1月~2月にかけて中国進出日系企業の経営状況を調査。
2012年4月のシンガポール支店長就任後はタイ・インドネシア・ベトナム等ASEAN各国に進出している日系企業の経営状況を調査。
経営の観点から日本企業のアジア進出をサポートする。

前のページへ戻る

  • セミナー&商談会のご案内
  • アジアUPDATE
  • 国別情報一覧

PAGETOP