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2020.02.20

【インド】弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ/《インド編》第8回「M&A及び組織再編」
【インド】第8回「M&A及び組織再編」
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《インド編》 第8回「M&A及び組織再編」

1.総論
M&A及び組織再編については、2013年インド会社法第15章(第230条乃至240条)に規定されています。もっとも、後述の第2段落におけるM&A及び組織再編の形態のうち、①事業譲渡、②資産譲渡、及び⑤株式譲渡においては、上記規定に従うことなく当事者間の合意のみで行うことも可能です。なお、M&A及び組織再編を検討される場合においては、2013年インド会社法の他、1961年インド所得税法及び2002年インド競争法等の規制についても留意する必要があります。

2.M&A及び組織再編の形態
インドにおけるM&A及び組織再編の形態としては、主に以下の5つの方法が想定されます。

①事業譲渡(Slump Sale)
②資産譲渡(Asset/Itemized Sale)
③合併(Merger and Amalgamation)
④分割(Demerger)
⑤株式譲渡(Transfer of Shares)

3.事業譲渡
(1)定義・性質
「事業譲渡」とは、当該譲渡における個々の資産及び負債に対して価額を割り当てることなく一括対価での譲渡の結果としての1以上の事業(Undertaking)の移転を意味するものと定義されています(1961年インド所得税法第2条(42C))。
また、「事業(Undertaking)」には、事業の一部もしくは全体として行われる事業活動又は事業の1単位又は1区分を含むものとされていますが、個々の資産もしくは負債又は事業活動を構成しないそれらの組み合わせを含まないとされています(同法第2条(19AA)説明1)。

(2)手続
譲渡会社及び譲受会社それぞれにおいて、2013年インド会社法に従った機関決定が必要となります。なお、譲渡対象となる事業が、前会計年度における譲渡会社の監査済貸借対照表上の純資産の20%を超える場合等一定の要件に該当する場合、譲渡会社における事業譲渡の承認は、取締役会決議事項ではなく、株主総会特別決議事項である点には注意が必要です(2013年インド会社法第180条)。

(3)債権債務・契約上の地位の承継
事業譲渡の場合、譲渡会社の債権債務・契約上の地位の承継には、当該契約に別段の定めがない限り、債権者や契約の他方当事者等の個別の同意が必要となります。また、事業譲渡の一部として従業員の移転が予定されている場合は、原則として従業員からの個別の同意も必要となります。さらに政府機関から発行されているライセンス・許認可等が事業譲渡により移転される場合は、当該政府機関からのNo Objection Letter又は承認を取得する必要があります。

(4)国家会社法審判所(NCLT: National Company Law Tribunal)が関与する事業譲渡
2013年インド会社法第15編に規定されている組織再編の一手段として事業譲渡を行う場合、後述する合併(第5段落)及び会社分割(第6段落)の場合と同様に国家会社法審判所の関与が必要となります。また、国家会社法審判所が関与する事業譲渡の場合、必要に応じて債権者集会が開催されますので、債権債務・契約上の地位の承継については、前述の当事者間の合意による事業譲渡の場合と異なり、債権者からの個別の同意等は不要となります。

4.資産譲渡
(1)定義
資産譲渡とは、会社の全部又は一部の資産をそれぞれの資産について個別の対価で譲渡するものとされています。

(2)事業譲渡との相違点
前述のとおり、事業譲渡は、①会社の1以上の事業の譲渡であり、②譲渡される事業は、それ自体で事業活動を行うことができるものでなければなりません。また、③事業譲渡の対価は、個々の資産及び負債に価額を割り当てることなく一括対価で譲渡されなければならないという性質を有しています。これに対して、資産譲渡は、譲渡対象となる個々の資産自体では事業を構成せず、かつ個々の資産それぞれに対して価額が割り当てられる点等において、事業譲渡とは異なる性質を有することになります。
事業譲渡と資産譲渡とでは、それに課される税額が異なることになりますので、その区別には十分ご注意下さい。

(3)手続
譲渡会社及び譲受会社それぞれにおいて、2013年インド会社法に従った機関決定が必要となります。

(4)債権債務・契約上の地位の承継
資産譲渡の場合、譲渡会社の債権債務・契約上の地位の承継には、当該契約に別段の定めがない限り、債権者や契約の他方当事者等の個別の同意が必要となります。また、資産譲渡に伴い従業員の移転が予定されている場合は、原則として従業員からの個別の同意も必要となります。さらに政府機関から発行されているライセンス・許認可等が移転される場合は、当該政府機関からのNo Objection Letter又は承認を取得する必要があります。

5.合併
(1)定義
合併とは、1以上の会社と別の会社の合併、又は複数の会社が新たな1つの会社を設立することを意味するものとされています(1961年インド所得税法第2条(1B))。

(2)手続
会社の合併は、2013年インド会社法第15編に規定されている組織再編に関する規定に従い、国家会社法審判所に対して合併承認の申立てを行う必要があります。国家会社法審判所は、上記の申請に基づき、合併存続会社及び合併消滅会社の株主総会及び債権者集会の招集を命ずることができます(2013年インド会社法第230条1項)。このように招集された株主総会において、議決権数の4分の3以上の賛成、及び債権者集会における債権額の4分の3以上の賛成があった場合、国家会社法審判所は合併承認の命令を発することができます(2013年インド会社法第230条6項)。
なお、1956年インド会社法においては、すべての合併について管轄の高等裁判所による承認が要件とされていましたが、2013年インド会社法においては、①複数の小規模会社間の合併、②親会社と完全子会社間の合併、又は③別途規則で定める種類の会社間の合併については、国家会社法審判所(高等裁判所に代わる承認機関)による承認が不要となりました(2013年インド会社法第233条1項)。

(3)債権債務・契約上の地位の承継
合併の場合、合併消滅会社の債権債務・契約上の地位は、合併存続会社に包括的に承継されるため、当事者間の合意による事業譲渡の場合のように、債権者や契約の他方当事者等から個別の同意を得る必要はありません。また、政府機関から合併消滅会社に対して発行されているライセンス・許認可等も、原則として合併存続会社に承継されることになります。もっとも、従業員の移転が予定されている場合には原則として従業員からの個別の同意が必要となる点については、事業譲渡の場合と同様です。

(4)税務上のメリット
インド所得税法上の条件を充たした場合、合併消滅会社の累積損失及び償却されていない減価償却は、合併存続会社の減価償却のための損失・費用と見做されます。また、インド所得税法第47条 (vi) は、合併計画に従った固定資産の移転につき同法に基づくキャピタル・ゲイン課税を免除しています。さらに、インド所得税法第47条 (vii) は、合併消滅会社の株式との引き換えに行われる合併存続会社による株主に対する株式割当についても、同法に基づくキャピタル・ゲイン課税を免除しています。

6.会社分割
(1)定義
会社分割とは、1956年インド会社法第391条乃至394条に基づく組織再編スキームに従った分割会社によるその1以上の事業を分割承継会社への譲渡を意味するものとされています(1961年インド所得税法第2条(19AA))。

(2)手続
会社分割は、2013年インド会社法第15編に規定されている組織再編に関する規定に従い、国家会社法審判所に対して分割承認の申立てを行う必要があります。国家会社法審判所は、上記の申請に基づき、分割会社及び分割承継会社の株主総会及び債権者集会の招集を命ずることができます(2013年インド会社法第230条1項)。このように招集された株主総会において、議決権数の4分の3以上の賛成、及び債権者集会における債権額の4分の3以上の賛成があった場合、国家会社法審判所は分割承認の命令を発することができます(2013年インド会社法第230条6項)。

(3)債権債務・契約上の地位の承継
会社分割の場合、分割会社における分割対象となる事業に関する債権債務・契約上の地位は、分割承継会社に包括的に承継されるため、当事者間の合意による事業譲渡の場合のように、債権者や契約の他方当事者等から個別の同意を得る必要はありません。しかしながら、政府機関から分割会社に対して発行されているライセンス・許認可等は、当然には分割承継会社に承継されません。また、従業員の移転が予定されている場合には原則として従業員からの個別の同意が必要となる点については、事業譲渡や合併の場合と同様です。

(4)税務上のメリット
インド所得税法上の条件を充たした場合、インド所得税法第47条 (vib) に基づき、分割計画に従った分割会社から分割承継会社への固定資産の移転につき、キャピタル・ゲイン課税が免除されます。

7.株式譲渡
(1)手続
株式譲渡については、2013年インド会社法の規定に従った機関決定が必要となります。特に、2013年インド会社法第2条68項において、非公開会社はその附属定款に株式譲渡を制限する旨が規定されている会社と定義されているため、譲渡される株式が非公開会社の株式である場合は会社の承認が必要となります。

(2)譲渡価格
「インド居住者」と「インド非居住者」間の株式譲渡については、1999年インド外国為替管理法(the Foreign Exchange Management Act, 1999 )及びそれに基づいてインド準備銀行が発行するMaster Circular on Foreign Investment in India等に従わなければなりません。

(a)「インド居住者」から「インド非居住者」への株式譲渡
日本企業がインド人株主から株式を譲り受ける場合のように、「インド居住者」から「インド非居住者」へ株式を譲渡する場合の譲渡価格については、上場会社の株式の譲渡の場合、インド証券取引委員会のガイドラインに基づいて行うことができる株式の第三者割当の場合の引受価格以上を譲渡価格としなければなりません。具体的には、①基準日前の26週間において公認の証券取引所で取引された当該普通株式の売買高加重平均価格(VWAP: Volume Weighted Average Price)の週間高低額の平均価格、又は②基準日前の2週間において公認の証券取引所で取引された当該普通株式の売買高加重平均価格の週間高低額の平均価格のいずれか以上の価格を譲渡価格としなければなりません。
他方、非上場会社の株式の譲渡の場合は、独立当事者間取引に基づく株価評価として国際的に受容されている株価算定方法に従って算定され、インド勅許会計士又はインド証券取引委員会に登録されているマーチャント・バンカーによって認証された公正価格以上を譲渡価格としなければなりません。

(b)「インド非居住者」から「インド居住者」への株式譲渡
日本企業が保有する株式をインド企業へ譲渡する場合のように、「インド非居住者」から「インド居住者」へ株式を譲渡する場合の譲渡価格については、上場会社の株式の譲渡の場合、上記(a)で述べた平均価格のいずれか以下の価格を譲渡価格としなければなりません。
他方、非上場会社の株式の譲渡の場合は、上記(a)で述べた公正価格以下を譲渡価格としなければなりません。

(3)インド準備銀行への報告
原則としてインド居住者は、株式譲渡の対価を受領/送金した日から60日以内に、Form FC-TRS (Single Master Form) の様式でその株式譲渡の報告をインド準備銀行が指定するウェブサイトからオンラインで提出しなければなりません。

(4)債権債務・契約上の地位の承継
株式譲渡の場合、当該会社の実質的な所有者である株主に変更があるにすぎないため、債権債務関係及び契約上の地位について変更は発生しません。
 
以 上
 
※本稿の著作権は、弁護士法人マーキュリー・ジェネラルに帰属しています。  
  
第9回に続きます。
 
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【掲載元情報】
弁護士法人マーキュリー・ジェネラル  作成

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