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2019.06.26

【アラブ首長国連邦(UAE)】第2回「UAEにおける汚職防止関連法について」
【アラブ首長国連邦(UAE)】弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ/《アラブ首長国連邦(UAE)編》第2回「UAEにおける汚職防止関連法について」
◇「弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 国際コンテンツ」は、弁護士法人マーキュリー・ジェネラル様からのアジア各国の国別情報を進出~撤退までの“シリーズ”で皆様にお届けします。
 
《UAE編》第2回「UAEにおける汚職防止関連法について」
 
1.本稿の目的
 UAEは、トランスペアレンシー・インターナショナルが毎年公開している、その国の公務員と政治家がどの程度腐敗していると認識されているかを国際比較した腐敗認識指数(いわゆる汚職番付)において、世界ランク21位と良好な結果を示しています(2017年度。日本は20位)。このことは、UAEでビジネスを行う者やUAEを分析する専門家から、UAEは比較的清廉な国であると評価されていることを意味します。
 それでは、実際のところUAEではいったいどのような汚職に関する法規制がなされているのでしょうか。本稿では、UAEにおいて適用される汚職の規制に関する法規制を概観し、その中でも2016年に法改正がなされ、中心的な役割を担っているUAE刑法の規制の概要について明らかにすることを主な目的とします。
 
2.汚職防止関連法の概観
 UAEにおいて、2018年8月時点において、汚職防止を包括的に定めた法律は存在しておらず、汚職防止及び贈収賄に関する具体的な規定は、主として、以下の法律に、個別に規定されています。

 - 1987年連邦法第3号(以下「UAE刑法」といいます。)
 - 2001年のUAE連邦法第21号
 - 2006年のドバイ政府人材管理法第27号
 - アブダビ首長国における公務員に関する2006年のアブダビ法第1号(UAE刑法を除く上記の法律を「公務員法」といいます。)
 
 公務員法では、公務員が受ける贈答品や接待等に関し、制約が課せられています。
また、UAE特有の規制ではありませんが、英国贈収賄防止法や米連邦海外腐敗行為防止法(FCPA)の賄賂禁止規定においては、英国や米国の領域外でも適用されることがあり、UAEでビジネスを行う者は、中東で行われた不正行為に関し、責任が問われる可能性があります。
  
3.UAE刑法における汚職防止規定
 現行のUAE刑法における収賄規定においては、公務員等が、その職務上の義務違反を伴う作為又は不作為の対価として、本人又はその他の者のために、直接又は間接に、不当な贈与、特権その他の利益を要求し、承諾し、又は約束する行為が、処罰の対象とされており、かかる処罰規定は、当該公務員が当該作為・不作為を意図していなかったとしても適用され、また、当該作為・不作為の後に上記要求・承諾・約束がなされた場合であっても、当該公務員等に適用されます。
 これに対する贈賄規定として、何人も、公務員等の職務上の義務違反を伴う作為又は不作為を行わせるために、当該公務員等に対して、直接又は間接に、不当な贈与、特権その他の利益を提供する行為が、処罰の対象とされています。かかる贈賄行為については、仲介者についても、処罰の対象となる旨が定められています。
 かかる現行の贈収賄禁止規定は、改正前と比べ、「直接又は間接」の贈収賄行為を対象とした点で、適用範囲が拡張されています。これに加えて、2016年のUAE刑法改正においては、1.適用対象である「公務員」の範囲が拡張され、2.民間企業の被雇用者への贈収賄罪の適用が明文化されるとともに、3.外国公務員による汚職への適用が新たに規定されました。以下、順にご紹介します。
 
⑴「公務員」の定義の拡張
 UAE刑法にいう「公務員」とは、選挙によって選ばれたか任命されたかどうかを問わず、連邦又は地方レベルで、立法・行政又は司法上の職務に従事する者と規定され、条文においては、具体的に公務員となりうる地位の者が列挙されています。
 改正法では、かかる列挙された者の1つとして、「連邦政府あるいは地方自治体が全部または一部を所有する企業…(略)
の役員その他すべての従業員」が規定されることになり、旧法と比べて適用範囲が拡張されていると考えられます。
 加えて、上記のカテゴリーに該当しない場合であっても、「所定の法令に基づき指示する権限を有する公務員から与えられた指示に従って公務に関する職務を行うものは、当然に公務の委託を受けた」とみなされる旨の規定が存在していますので、留意が必要です。
  
⑵民間企業の被雇用者の贈収賄行為の明文化
 改正前のUAE刑法では、民間企業の経営者・従業員に対する贈収賄行為については、これを処罰する明文の規定は存在していませんでした。しかし、実際には、民間における贈収賄についても、UAEの裁判所によって犯罪行為とみなされて、処罰の対象とされていたようですが、今回のUAE刑法の改正により、民間企業の経営者・従業員に対する贈収賄行為の処罰範囲が明確となりました。
 民間における個人の贈収賄行為については、民間企業の経営者・従業員等が、その職務上の義務違反を伴う作為又は不作為の対価として、本人又はその他の者のために、直接又は間接に、不当な贈与、特権その他の利益を要求し、承諾し、又は約束する行為や、民間企業の経営者・従業員等の職務上の義務違反を伴う作為又は不作為を行わせるために、当該経営者・従業員等に対して、直接又は間接に、不当な贈与、特権その他の利益を提供する行為が、処罰の対象とされています。
 加えて、当該贈収賄行為を行った役員・従業員が所属する企業についても、当該贈収賄行為の存在を知っていたかどうかに関わらず、その代表者・取締役・代理人により行われ、かつ、当該企業の計算又は名義において行われた贈収賄行為について、責任を負います。企業がこの責任を負う場合、50万ディルハム以下の罰金を科されることがあり、この罰金の金額も2016年改正により引き上げられています。
 
⑶外国公務員による汚職への適用拡大
 改正前UAE刑法における「公務員」の定義には、外国の公務員は含まれていませんでした。しかし、改正UAE刑法においては、「外国公務員」についての定義規定が設けられ、外国公務員の一定の汚職行為についても、処罰の対象となりました。
 かかる「外国公務員」の定義の具体的内容としては、恒久的か一時的かを問わず、選挙により選ばれたか任命されたかを問わず、給与の授受の有無も問わず、UAE以外の国における立法上、行政上又は司法上の地位を占める者、及び、公務員としての職務を委任された者が、これに該当します。
 加えて、改正UAE刑法においては、国際機関の職員やその者に代わって国際機関の業務を引き受ける者についても、処罰の対象に含まれることになりましたので、留意が必要です。
 
⑷企業における対策
 以上述べてきたとおり、UAE刑法における贈収賄の規制範囲は拡大しており、とりわけ、自社の従業員が関与した場合に、所属企業に罰金等の不利益を直接的に与える可能性が存在しています。このような事態を回避するための手段としては、コンプライアンス・プログラムを構築し、組織全体として贈収賄行為の危険性の認識や防止措置としての監督体制等を講じておくことが重要だと思われます。
 
以上
 
※本稿の著作権は、弁護士法人マーキュリー・ジェネラルに帰属しています。
 
第3回に続きます。

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【掲載元情報】
弁護士法人マーキュリー・ジェネラル  作成

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